父が脳梗塞のリハビリを終え、言語障害を残したまま退院してきました。父の言いたいことを理解してあげられず困っています。どのようにコミュニケーションをとれば良いのでしょうか。
《回答者》
◆リハビリテーション科
今村病院
リハビリテーション部
言語聴覚士
岩松 裕子先生
脳梗塞の後遺症として考えられる言語障害には大きく分けて、口部の麻痺や失調などのために上手く発音できない「構音障害」、声がかすれたり声を出しにくい「発声障害」、ことば自体が不自由になる「失語症」などがあります。構音障害の場合は、ゆっくり話してもらうことで聞き取りやすくなることがあります。筆談は構音障害にも、発声障害にも有効です。
失語症にはいろいろなタイプがあり、さらに聴く・話す・読む・書く、各々の障害の程度によって対応が異なります。つまり、10人の患者がいれば10人それぞれに異なる有効なコミュニケーション方法が存在するのです。
失語症に共通する重要なことは、相手が話そうとしているときは、焦らせずじっくり聞いてあげる姿勢です。表情やジェスチャー、表出されたことばから言いたいことを推測するようにします。正しく言えなかったからと、何度も言い直しをさせることは良くありません。直されるのが嫌で話すことをやめてしまう恐れがあります。「ハイ」や「イイエ」で答えられるように質問したり、「AとBどちらですか?」など選択肢を提示して答えやすい質問をすると良いでしょう。鉛筆を持つことが可能なら絵や図を描いてもらうと、文字が正しく書けなくても書かれたものがこちらの理解する手掛かりとなり得ます。
こちらが話す時は、ゆっくり、はっきりと話します。とはいっても、1音ずつ区切って話すのは不自然でかえって解りづらくなります。単語レベルでの理解が可能でも、長い文や複雑な文になると理解が難しくなりますので、短い文で、解りやすい言葉を用い、具体的に表現します。表情豊かに、ジェスチャーを交えて話したり、また絵や図、記号、文字などを見せながら話すと理解のヒントとなるかもしれません。この場合、文ではなくキーワードのみを提示する方が良いでしょう。
言っていることが解らないからといって曖昧に聞き流したりせず、相手の言いたいことを〝聞き取ろう〟〝理解しよう〟とすること、また相手に〝理解してもらおう〟という温かい態度で接することが大切です。是非、一番の理解者になってください。
失語症状は十人十色で、関わり方は一人ひとり異なります。また、発症から年数が経過しても失語症のリハビリは有効とされています。言語聴覚士に相談してみてください。
(ニュース和歌山/2022年3月26日更新)