《回答者》
◆整形外科貴志川リハビリテーション病院
手・足の外科センター
整形外科専門医  手外科専門医
谷口 泰德副院長・センター長

 転倒などによって親指の第2関節の側方に強い衝撃が加わり、靱帯を損傷すると親指で物がつまめなくなります。このケガは、親指の第2関節は「MP関節」と呼ばれるので、母指MP関節靱帯損傷と診断されます。原因は転倒などの他にバスケットボールなどの競技中に親指が側方に強制され受傷します。突き指と自己判断してしまう患者さんが多いので、注意が必要です。症状は、親指の第2関節の疼痛、腫れです。靱帯が完全に断裂していると親指に横から力を加えると関節のぐらつきや痛みが強くなります。X線検査では、靱帯が骨に付着していた部分がはがれ小さな骨片がみられます。特に異常がみられないことがあり、そのため病院でも靱帯損傷が見逃されることもあります。親指の横方向に力を加えたX線検査で関節の動揺性が確認でき、診断されます。

 治療は靱帯の不完全断裂では、アルミ副子で3~4週間程度の外固定を行います。靱帯が完全断裂し不安定性が強い場合は、手術による靱帯修復が必要です。完全断裂に保存療法をした場合、関節の変形や不安定性などの後遺症が残ることがあります。早めに手外科専門医を受診し、治療についてご相談することをお勧めします。

(ニュース和歌山/2022年6月26日更新)