様々な生き物が共存する紀美野町小川地区の中田の棚田。ここを中心に4月、活動を始めた紀美野町自然環境ネットワークが7月16日㊏と18日㊊に初のイベントを行います。同ネットを立ち上げたのは2020年11月に広島市から移住し、棚田の再生に取り組んでいる行年恭兵さん(29)です。

拠点は棚田

──なぜ紀美野町に?

 「結婚を機に自然のある暮らしを求めて移り住み、棚田の再生をする地域おこし協力隊として活動しています。ここには鳥や昆虫、ほ乳類、植物など多様な生き物がいます。ただ、その事を訪れる人たちに伝えたくても、だれも調べていないので伝えられません。そこで今年3月、昆虫や両生類に詳しい先輩移住者たちと生物調査を始めました。棚田を歩き回ってチョウを採集し、鳴き声でカエルを判別。また、ほ乳類用のわなを仕掛けました」

──どんな生き物が?

 「里山に生息するニホンアマガエルやシュレーゲンアオガエル、人気のアカハライモリほか、チョウだけで16種類、さらに野ウサギやアカネズミ、ムササビといった小さなほ乳類がいました。植物では、見たことのなかったホタルブクロが自生していましたし、エノキがあるのでオオムラサキが来る可能性もありますね。調べるうち、自然や生き物に詳しい人や好きな人が互いに情報交換できるようにと、ネットワークを立ち上げたんです」

──どんな活動を?

 「自然の楽しさを知ってもらうため、初めてのイベントは小学生向けの生き物観察です。7月16日はアカハライモリを探し、模型に色を塗ります。18日はチョウやバッタなどの昆虫採集。いずれも自然に詳しい講師から特徴や生態を教わります」

 

接点をつくる

──出身は?

 「広島市です。愛知の大学院で森林生態学を専攻し、国内外来種による遺伝子汚染を研究しました。就職で地元に戻り、教科書会社で高校生物を編集し、興味を持ってもらえる教科書づくりに取り組みました。今の活動に通じますね」

──今後は?

 「チョウや鳥に詳しいとか、生き物情報をSNSで発信するのが得意とか、専門知識を持つ人がつながり、ワークショップや講演会の開催、イベントへ講師派遣などを考えています。こうした情報をまとめて発信し、専門家と一般の人の接点をつくります。軌道に乗れば町の事業者と連携し、イベントを通して地域活性化に貢献したい。また、棚田の再生過程で、生態系の変化を伝えていけたらなと思います」

 

中田の棚田いきもの観察イベント 

◎世界で1つだけのアカハライモリの模型をつくろう…7月16日㊏午前9時

◎虫博士といっしょにちょうちょを調べよう…7月18日㊊午前9時。

 いずれも小学生と保護者対象。各5家族。1人500円。申し込みは希望のイベント名、代表者名、電話番号、大人と子どもの数をメール(kimino.nature.network@gmail.com)。7月11日締め切りで、応募多数の場合は抽選。作成したものは秋の交流フォーラムで展示する予定。

(ニュース和歌山/2022年7月2日更新)