父が仕事中に事故に巻き込まれ、脳挫傷と診断された上、高次脳機能障害を発症していると言われました。高次脳機能障害とは、どのような症状が出るのでしょうか? また、今後も仕事で車を運転する必要があるのですが、影響はありますか?
《回答者》
◆リハビリテーション科
今村病院
リハビリテーション部
言語聴覚士
赤津 花凜先生
高次脳機能障害とは、脳卒中などの脳血管障害や脳外傷によって脳がダメージを受けることで生じる症状のことです。主として、失語症、注意障害、遂行機能障害、記憶障害などが挙げられます。これら高次脳機能障害は、脳損傷の部位・範囲・程度によって、症状や障害の重さが変わります。
それぞれ説明します。
▽失語症…言語機能の喪失あるいは障害を指します。話す・聞く・書く・読むといった、言葉を使って行うことすべてが難しくなります。相手の話を理解できない/言葉が出てこない/言いたい言葉を言い間違える/文字や文章が読めない/意味が分からない、などです。それにより、コミュニケーションが図りづらくなります。車の運転場面では、標識や看板の文字が理解できない/事故の状況説明ができない、などにつながります。
▽注意障害…脳が損傷を受けた側とは反対側の刺激に反応することが難しくなります(半側空間無視)。とくに多いのが、右脳のダメージによって左側の空間を認識できないといった症状です。また、集中力が持続できない/注意散漫/不注意/同時に二つの作業を行えない、などの特徴も見られます。運転場面では、長時間、運転に集中できない/車線変更が難しい/周囲の音に気を取られる/標識や人物を見落とす、などにつながります。
▽遂行機能障害…計画的な行動ができなくなるとともに、行動を適切に修正することが難しくなります。具体的には、一つのことをしながら別のことを同時に進行できない/料理の手順を決められない/効率よく買い物ができない、などです。運転場面では、車を運転する手順がわからない/目的地までの経路設定ができない/ルート変更が生じた際に対応できない、などにつながってきます。
▽記憶障害…健忘症候群が代表的です。脳損傷発症後の出来事を記憶できなくなる「前向性」と、脳損傷発症以前の記憶が失われる「逆行性」があります。加えて、単語の意味など一般的な知識が欠落することもあります。運転場面では、道順を覚えられない/目的地を忘れてしまう、などにつながります。
このように、高次脳機能障害は、車の運転にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。また、これらの症状は、単体で出現することもありますが、いくつかの症状が同時にあらわれるのがほとんどで、症状の重なり方は一人ひとり異なります。さらに、環境の影響なども大きくかかわってきます。
今回ご紹介した症状がある場合は、脳神経外科に相談することをおすすめします。
(ニュース和歌山/2022年11月27日更新)