《回答者》
◆循環器内科
みなかたクリニック
南方 常夫院長
特発性顔面神経麻痺は「ベル麻痺」とも呼ばれ、10万人あたり20~30人が発症する病気です。末梢性顔面神経麻痺の中で最も多くを占めています。原因は、単純ヘルペスウイルスの関与が考えられ、神経の炎症や浮腫を改善させるステロイドと、ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬を組み合わせて治療します。
しかし、ご相談者は、同じ側の耳の痛み、めまい、味覚障害、さらに、耳介帯状疱疹も認められるとのこと。これは、「ラムゼイ・ハント症候群」といい、10万人あたり約5人が発症する、ベル麻痺に次いで多い末梢性顔面神経麻痺です。神経節という部位に潜んでいた水痘や帯状疱疹ウイルスが、免疫力が低下することで再活性化し、発症します。この病気は約3割しか自然治癒しないことから、ステロイドや抗ウイルス薬はより早期に、しかも高用量使用する必要があります。ただ、耳介帯状疱疹や難聴、めまいが顔面神経麻痺に遅れて発現したり、それらが見られない無帯状疱疹性ヘルペスだと初診時にベル麻痺と診断され、十分量の薬が処方されないことも多く、予後不良の一因となっています。
なお、50歳以上を対象とした帯状疱疹予防ワクチンがあります。主治医とご相談下さい。
(ニュース和歌山/2022年11月27日更新)