漆器の町として知られる海南市黒江は、古い町屋が並ぶ風景にノスタルジックな雰囲気が感じられます。今回の質問は同市のペンネーム、ココちゃんさんから届いた「黒江にある漆器のお店や民家の玄関先に大きな桶が飾られていますが、どうして?」です。
現地に行くと、建物の前に直径1㍍前後の桶が立てかけているのをちらほら見かけます。店の看板にしたり、植木を置いてオブジェにしたり…。この桶は何なのでしょう?
漆器の町アピールへ 道具再活用し統一感
「海南市黒江にあるお店や、民家の玄関先に大きな桶が飾られているのはなぜ?」。直径1・6㍍と一際大きな桶を置いている紀州漆器伝統産業会館で聞くと、「約100年前まで、漆精製の際に使っていた桶を、まちおこしの一環として飾っています」とのことでした。
この桶は、木から取り出した漆を入れてかき混ぜ、ゴミを取り出す際に活用していた「くろめ桶」です。今はこの作業を別の方法で行っているため、使われていません。
2011年、「黒江の町並みを活かした景観づくり協定」が締結されました。桶で統一感を出し、「漆器の町」をアピールしようと、同協定の運営協議会が置いてくれる店舗や家を募集したところ、16軒が協力を申し出ました。桶のほか、漆を入れていた古い一斗缶に座布団を縫い付け、イスにしている店もあります。
漆器づくりを支えた道具が時を超えて、町の風景に溶け込んでいるんですね。
(ニュース和歌山/2023年1月21日更新)