チャルメラの音色とともに夜の町を走る「王将ラーメン」店主の藪内英則さん(79)。1976年から屋台営業を続け、今月から長年愛されてきたラーメンを真空パックにし、販売を始めました。「年内に引退する予定。その前に行う自分なりの総まとめです。一つひとつ感謝を込めて作っています」と笑顔で話します。

屋台が的中

──出身は?

 「岸和田市です。中学卒業後、料亭で6年間、板前見習いをしていました。その後、店を持つための資金づくりにと、いくつかの会社を転々とする中、32歳のころ、泉佐野の駅前でラーメンの屋台に出合いました。店を構えることばかり考えていた自分は、店舗を持たない商売の方法に『その手があったか!』と、すぐその会社に入社し、1年ほど勉強しました」

──開業は和歌山で?

 「そこは近畿圏に屋台を走らせていたのですが、和歌山に出していませんでした。『ここがねらい目』と生まれ育った大阪から、だれ1人知り合いのいない和歌山で『王将ラーメン』を設立。軽トラック1台でスタートしました」

──ねらいは的中しましたか?

 「はい。景気がどんどん良くなり、1980年代後半からのバブル期には一晩で最高300食売れたこともありました。和歌山市のほか、田辺と串本に支店を置き、県内各地を回っていました。ただ、24時間営業の店やコンビニが増え、徐々に売上げが減るように。その結果、トラックの台数を減らして、10年以上1人だけで営業していました。現在、東は岩出、南は有田まで、マイペースに回っています」 

未来ある形

──こだわりは?

 「スープは豚の骨と軟骨を合わせて1週間煮込みます。骨だけでは生臭さがありますが、軟骨を入れることで匂いがやわらぎ、味はまろやかになります。めんは自家製で、保存料は一切使っていません。その代わり、できためんはすぐ冷凍保存します。すると、めんにコシが生まれ、つるんとのどごしがよくなります。屋台を始めてから40年間ずっと呼んでくれる常連さんもいますよ」

──パックラーメンの販売を始めました。

 「今年で80歳。体力的にそろそろ限界なので、年内に引退する予定です。いちラーメン屋として、長らく愛してくれたお客さんに恩返しをするのが〝終活〟になると思い、店の味を手軽に、そして安価に楽しんでもらうため開発しました」

──内容は?

 「めんもスープも具材も、店の味をそのまま真空パックにしているので、家で簡単に再現できます。屋台では一杯800円ですが、3食セットで1000円。来年からはパックをメーンに、今まで届けられなかった地域へ、王将の味を広めていきます」

──今後は?

 「一昨年、『屋台ラーメンの営業を勉強したい』という後継者が現れたので、屋台の灯を消すことなく続けていけそうです。高齢化が進む中、外出もままならない人のお宅に伺い、家の前でラーメンを作る…。これができるのは屋台だからこそ。まだまだ未来のある形だと信じています」

【王将ラーメン】
営業時間 19:00~23:00(受付は22:30まで)
電話 1号車 090・3822・2206
    2号車 080・3774・3099
定休日 1号車 火曜
     2号車 月曜

※当日販売する地域についてはツイッターで発信中。詳細はQR、または「王将ラーメン」と検索。

(ニュース和歌山/2023年3月25日更新)