住宅街を入っていくと突然現れる〝江戸時代〟の街並み。海南市且来のすわん江戸村と、ここを拠点とする劇団紀州が20周年を迎えました。かつて大映や松竹芸能に所属し、映画、舞台に出演していた創設者の市川昇次郎さん(76)は、「良い芝居をし、劇場を目的に県内外から来て頂くことで、生まれ故郷の海南をもっと活気づけたい」と目を輝かせます。
芸道場を設立
──舞台はいつから?
「9歳からです。叔父であり、大阪の旅一座の座長だった市川福之介に教えてもらい、舞台に立ちました。高校時代から大映の映画に出演し、28歳のころ、松竹芸能に移りました。40歳前後で2度、のどのポリープを切除。医者には声が出なくなるかもしれないと言われましたが、なんとか出るように。しかし、以前と同じ声でなくなったため、47歳で退所しました」
──その後、どんな活動を?
「退所後は、テレビに出たり、フリーで歌やコンサートの司会などを務めたりしていました。でも、やはり芝居の世界で役に立ちたいと、演劇、舞踊、歌を教える〝芸道場〟を2003年に立ち上げ、役者志望を集めました。人が育ってくるとともに、興行を始め、半年後に劇場に転換。人情喜劇や時代劇が中心ですが、最近は現代劇やサスペンスも披露します。個人的には、小難しいものより、大声でワーッと笑えるハッピーエンドが好きですね」
ファンの応援
──印象に残っていることは?
「後に紅白歌合戦にも出場する演歌歌手の三山ひろしさんや、歌謡コーラスグループの純烈さんと一緒に、2014年から19年まで年に数回、県外で興行したことですね。これがきっかけで一気に劇団の名前が知られ、劇場にも多い時は1日150~160人来てくださるようになり、公演依頼も増えました」
──一番の苦労は?
「2020年、新型コロナの影響で、ほとんど仕事がなくなったことです。14人いた団員は弟子の7人だけにしましたが、解散も考えました。ただ、ファンの方々が『お芝居を観るのは私たちにとってストレス発散。しかも学ぶこともたくさんある。なんとか江戸村を残してほしい』と、寄付で応援してくれたんです。その気持ちがとてもうれしく、何があっても劇場を守ろうと決めました」
──魅力はどこに?
「例えば『悪人』といっても、人情味ある悪人、根っからの大悪党、姑息な考えを持つ小悪党と、キャラクターは様々。台本から自分なりに人物像を考え表現する。お客さんが芝居の世界に没頭してくれた時、また、しっかり演じ切れた時の爽快感は、何ものにも代えられないです」
──今後は?
「和歌山の知名度は全国的に高くないと聞きます。だからこそ、濱口梧陵や井沢弥惣兵衛ら県ゆかりの偉人の芝居を作り発信していきたい。そこから歴史を調べたり、足を運んでもらえたりするよう、芝居を通じ和歌山の魅力を伝える『メッセンジャー』を目指します」
すわん江戸村
昼の部 13:00~
夜の部 18:00~
休演日 ㊋㊌
※外部公演などで休演する場合があるため要確認。
料金 2000円
当日 2500円
高校生以下 1000円
海南市且来645-1
☎073・482・5758
(ニュース和歌山/2023年5月6日更新)