和歌山に誕生して40年以上、カップ入りお好み焼の代名詞となった「おはなはん」。小分けされた新鮮な材料がセットされ、ほしいときにすぐ作り、できたてを味わえるアイデア商品です。しかし、広く一般に知られるようになるには、努力と工夫、そして社運をかけた挑戦がありました。二代目の松本務社長に聞きました。

食べたい時に すぐ作れる

 和歌山で長く愛され、親しまれてきた生カップお好み焼の歩みは、先代社長・松本章子氏の奮闘と重なります。  

 1967年、白浜ハイプレーランド(現・ホテルシーモア)にお好み焼店を開業。ただ、白浜は観光客が多く、「地元に根を張った商売がしたい」と72年、田辺駅前に店を構えます。味が評判となり、店内はできたてをほおばる客で賑わいましたが、持ち帰りだと冷めてしまい、味が落ちるのが悩みの種でした。電子レンジもない時代。そこで「ご家庭でも焼きたてのおいしさを味わってもらおう」と、材料をカップに入れ、食べたいときにすぐに作れる商品を発案しました。82年、「おはなはん」の誕生です。

 すぐさま自宅の車庫を工場に改装し、お店の傍ら、商品開発に没頭しました。務社長は「夜中まで働いていましたね。家にほとんどいませんでした」。当初はカップに生地の粉やキャベツをそのまま入れたものでしたが、工夫を重ね、パックにした材料をカップにセットする形に変えたところ、着眼点と使いやすさが評価され、スーパーに卸すまでに成長しました。ところが、目新しさが先立ち、買い物客がなかなか手にとってくれません。「どうしたら良さを分かってもらえるんだろう…」。そこでひらめいたのが、対面試食販売です。

カップの中に、お好み焼に必要な材料がセットされたおはなはん。写真のぶた玉のほか、いか玉、ミックス、モダン焼、2人前のお好み焼などがあります。(種類により、入っている材料は異なります)

運命拓いた 対面試食販売

 車に商品を積み込み、単身、各地のスーパーへ。エプロンと三角巾を身につけ、章子社長自ら店頭に立ちました。フロアに漂うお好み焼の匂い、ジュージュ ーと焼ける音。すると、一人、二人と足を止め、差し出したお好み焼を口に運びます。どんな言葉が返ってくるのか息をのんでいると、「おいしい!」「買うわ」。試食した人のほとんどが購入する売れ行きに、多くのスーパーと契約に至りました。務社長は「対面試食販売は当社の強みであり武器。できたてを食べてもらうことで、『簡単・便利・おいしい』という商品の魅力を実感していただけます」。いまも務社長を筆頭に社員が売場に立ち、そこで得たお客様の声を商品に生かします。

新登場の冷凍お好み焼は、だしから開発。国産素材だけを使用し、職人が一枚一枚手焼きで仕上げた逸品です。

 87年に製法特許を取得してからも、おはなはんは進化を止めません。粉は、天然のさばだしと独自に調合。野菜や卵は国産に限定し、徹底した品質・衛生管理のもと、パック詰めします。砂糖などの調味料は、家庭向けの小売り品を使用。「ご自宅の料理と同じように、安心して食べていただくためのこだわりです」と胸を張ります。

 現在、年間600万食を出荷するおはなはん。7種類のラインナップで、贈答用も揃えるほか、高級志向の冷凍お好み焼も販売。「お好み焼を食べることを『おはなはんを食べる』と言ってもらえるのが何よりうれしい。これからもお客様に喜んでいただける商品を届け続けます」。

おはなはん

和歌山市加納223-3
電話073-474-9010
https://www.ohanahan.co.jp
※和歌山、大阪、愛知のスーパーで販売中

(ニュース和歌山PLUS98号/2023年5月26日発行)