地域や災害情報を発信するミニFM局「きみのFM88(エイティーエイト)」を紀美野町神野市場の玉置敏明さん(64)が8月8日、自社倉庫で開局。和歌山市からの移住者ながら町づくりへの思いは熱く、15日は和歌山に上陸した台風7号関連の情報をいち早く発信し、町民の安全確保に一役買いました。「いつも住民の皆さんと共にあるラジオ局に」と目を輝かせています。

開局へ向けて

──和歌山市から移住されました。

 「15年ほど前に広い家を探し、紀美野町に移りました。町内の皆さんと触れ合ううち、地域に目を向け始めました」

──なぜラジオ局を?

 「高齢者が多いこの町は、南海トラフ地震など災害が起きれば情報難民ばかりになると思い、防災無線の立ち上げを模索していました。普段は楽しめて、災害時は被災者に寄り添えるものをと考え、ラジオにしました」

──きっかけは?

 「昨年6月、大阪市淀川区で防災防犯情報を発信するミニFM局「ひめ」をSNSで知ったことです。すぐ本庄強局長に会い、同様の局を開きたいと協力を依頼。2人で始めようとなりました」

──それからの動きは?

 「自社倉庫の2階を改装し機材を導入。今年5月末の試験放送にこぎつけました。直後の6月2日、大雨による水害で、被害状況発信を考えましたが、情報収集に美里支所へ行くことで、『被災者対応に支障が出ては』と踏みとどまりました。災害情報発信を目的に開設したのに何もできず、悔しい思いをしました」

地元情報提供

──開局直後、台風に見舞われました。

 「8月15日に台風7号が和歌山に上陸した時は、近くのスーパーが閉まっていることや、貴志川線が止まり、代行輸送になったことを流しました。それを聞いた住民が、貴志川線を利用する近所の学生に伝えるなど、情報が口コミで広まったと聞き、『根付いてきている』とうれしかったです」

──今はどんなことを?

 「6月の水害で、行政との連携がより必要と痛感し、緊急対策マニュアル作成を相談しています。リアルタイムで災害情報を伝えてくれる人も募集中。警察と特殊詐欺の啓発に向け動いており、消防署とは救急情報です。また、地元の高校生による番組制作、放送にも取り組んでいます」

──目標は?

 「どんな時でも町民8千人の側にあり、役に立つことです。インターネットラジオを通じ、紀美野町を広く知ってもらいたいですね」

きみのFM88

 周波数は88・4MHz。神野市場のスタジオから半径約50㍍で受信可。インターネットラジオねとらじでも聞ける。普段は主にジャズを流し、子育てに関わる人向けや昔話の読み聞かせコーナーもある。中でも、俳句講評が人気。

(ニュース和歌山/2023年9月9日更新)