明治37(1904)年、和歌浦で創業。濱辰商店は今や、和歌山市で最も歴史あるかまぼこ専門店です。看板商品の「扇かまぼこ」を筆頭に、夏はおつまみ、冬はおでんに人気のあげかま、さらに梅焼など多彩なラインナップ。伝統を守りながら練り物の魅力発信に積極的に取り組む濱辰商店常務の嶋俊範さんに伺いました。

弾力、歯ごたえ120年変わらぬ味

 口に運ぶとプリッとした弾力、ほんのり甘みのある味わい。創業時から愛され続けている看板商品「扇かまぼこ」は、後に二代目となる嶋栄一が「和歌木山」という四股名で春日野部屋に所属する力士だったことから、行司の呼出の扇に見立て、この名がつきました。

 「焼き、紅、白の3種類。ベーシックな〝焼き〟は、敬老の日やお誕生日のプレゼントに買われる方が多いですね。紅白はお正月のおせちには欠かせません。華やかな食卓になるとご好評いただいています」

 素材はイトヨリ、スケトウダラ、タチウオ、グチ、ハモ。配合も製法も創業当時のままです。とはいえ、この「まま」を引き継ぐまで、苦悩の日々がありました。「2000年から製造に携わりましたが、父をはじめ現場は昔ながらの職人揃い。言葉で教わることもなく、見て覚える日々が続きました。色、滑らかさ、香り、そして舌触りと五感が頼り。温度や湿度は毎日変化するので、二度と同じものは作れない。とにかく経験を積むほかなかったです」と振り返ります。

 

 

上質なすり身を贅沢に使用し、表面を香ばしく焼きあげた扇かまぼこ(焼き=写真左)。弾力のある歯ざわり、味わい深い食感が魅力の逸品です。店頭やスーパー、産直市場などで販売中。ネット販売では県外からの注文も増えています。

 

新商品開発し 練り物広げる

扇かまぼこの名前のきっかけとなった和歌木山の勇姿(二代目嶋栄一)

 新商品の開発にも積極的に取り組んでいます。おやつ感覚で食べられる「あげかまシリーズ」は、ピリからごぼう、たまねぎ、ねぎしょうがなどバラエティ豊か。また、企業のロゴを入れたり、結婚式の引出物用としてハート型かまぼこにメッセージを入れるなど、ユニークなかまぼこの注文も受けています。「細かな作業ですが、かまぼこでこんなことができるの!と驚いてくれるのが嬉しくて」と笑顔を浮かべます。食べるのがもったいないような、かわいいパンダかまぼこ(写真下)も人気です。

 さらに、祭りなどイベントに積極的に出店し、大人も子どもも歩きながら気軽に食べられる練り物を販売。「ベースは扇かまぼこですが、これがあるから新しいことにチャレンジできるんです」。

 代々受け継がれた伝統を守りながら、練り物の可能性を広げ、若い世代へ普及させたいと日々奮闘しています。

濱辰商店

曽祖父・濱野辰之助が創業。結婚して妻方の嶋という姓を名乗ることになり、旧姓を残したいとの思いから、苗字の“濱”と名前の“辰”を取って“濱辰”となったと伝わっています。

和歌山市雄松町3-48-1
9:00~18:00
水、日曜休
電話 073-402-1755
https://www.hamatatsu.co.jp

(ニュース和歌山PLUS102号/2023年9月23日発行)
※記事内容はすべて、2023年9月23日時点のものです。
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