今年で創業40年を迎えた紀の川市粉河の「力寿し」。看板メニューは、素焼きの香ばしさと煮詰めたタレの甘みが懐かしさを誘う「鮎ずし」です。今回は、両親から引き継いだ伝統の味を守りながらも、独創的なアイデアで寿司の可能性を追求し続けている店主の力谷昭夫さんに話を聞きました。
伝えていきたい 地元の食文化
昔から粉河では、紀の川の鮎を使った寿司が各家庭で作られていました。「開店からしばらくして看板メニューが必要と考えた父・宗慶が、『鮎ずしを出すことで伝統の食文化を残したい』と、近隣のお年寄りに味付けを聞きながら自分なりのアレンジを加え、ようやくできあがったと聞いています」。
高校卒業後、大阪で会社勤めをしていましたが、実家が人手不足で困っていると聞き、昭和62(1987)年、故郷に戻ってきました。その後、店を手伝っていたものの、料理の道を極めたいと、大阪の和食店で数年間修行。再び帰郷しました。
しかし、腕を磨いたと言っても、「鮎ずし」は父に習うほかありません。鮎の頭を取り、しっかり水洗いし、まずは素焼きに。次に、身も骨も柔らかくなるまで一昼夜じっくり炊き上げます。続いて醤油、酒、砂糖で味付けし、仕上げは1匹1匹丁寧に骨を取る…。父から学んだ工程を繰り返すことで、「力寿しの鮎ずし」を腕に叩き込みました。そして平成13(2001)年、2代目として店を任されることになり、今もなお、父の教えを忠実に再現し、作り続けています。
母直伝のシャリ フルーツ寿司に
ところで、力寿しといえば「フルーツ寿司」も有名です。
寿司とフルーツを組み合わせた斬新さに目が行きがちですが、「実は寿司はシャリが〝命〟 なんです」。そのシャリこそ、長年、父とともに力寿しを守り続けてきた母・ヨシ子さんの味。そして米は、3つのこだわり「粒がしっかりしている」「甘みがある」「口の中でとろける」が揃ったものだけを選び、炊き上がるとすぐに寿司酢を加え、手早く混ぜます。そうすることで、母直伝のシャリ、言い替えれば力寿しの「心」が生まれるのです。このこだわりが鮎ずしにも、フルーツ寿司にも生かされ、新旧の〝店の顔〟となりました。
フルーツ寿司を機にいろいろなアイデアが浮かぶようになり、それを鮎ずしにも反映しています。「最近、チーズやバター醤油味といった変わり種の鮎ずしを考案中です」と笑顔を浮かべる力谷さん。その発想を武器に、「鮎ずしを紀の川市の特産品として広めたい」と熱く語ります。
力寿し
紀の川市粉河10−6
☎0736-73-6670
(営)11:00~18:00
ランチは11:00~14:00、夜は予約のみ
㊡月曜
P有
https://chikarazushi-kinokawacity.jimdofree.com
(ニュース和歌山PLUS103号/2023年10月27日発行)
※記事内容はすべて、2023年10月27日時点のものです。
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