鍋でグツグツ煮込まず、鉄板で肉や野菜を焼き、卵にからめて食べるすき焼き。シェフの吉井麻衣子さん(45)は、「牛はもちろん、豚や鶏、魚介まで旬の野菜やフルーツと合わせることで、驚き感動してもらえるような料理を創作します」と目を輝かせています。
鍋でなく鉄板
──鉄板の上で焼くんですね。
「江戸時代、農民が鋤(すき)の上に食材を載せて焼いたのが起源だそうです。諸説ありますが、とにかく『鍋にこだわらなくて良いんだ』と鉄板を選んだのが最初です」
──具材は牛以外も。
「すき焼きの店はたいてい牛なら牛、鶏なら鶏ですが、色々食べたい。何なら魚介も。ただ、それらを1つの鍋に入れて、『さぁ、食べて』と出すのは違う。すき焼きのコンセプトは、割り下と卵で食べること。例えば卵なら、とき卵だけでなく、メレンゲにしたり、焼いたり、くん製にしたりと工夫しています」
──コースのみです。
「すき焼き5品を出すコースです。内容を毎月替えるのにこだわり、野菜やフルーツの旬に合わせ、料理を考えています。カウンター席の前で焼くので、お客様の反応をダイレクトに感じられ、『こんな食べ方あるんや』と驚き楽しんでくれるのが、うれしいです」
──前身は串揚三昧幸華(さちはな)でした。
「テーブルでお客様に串を揚げていただく店で、母が1991年に始めました。私は高校生のころから手伝い、卒業後に店の板前さんについて修行。21歳の時、今の場所に移転したのを機に、料理長を任されました。自分で揚げるスタイルはお客様に喜ばれましたが、一方で、揚げ時間で味わいが変わるなど限界も感じていました」
──それでIPPONに転換したのですか?
「いえ、幸華を続けながら2011年、JR和歌山駅近くで創作串揚94(きゅうよん)をオープン。一品はなく、注文本数に応じ店が提供していきます。その料理をすべてプロデュースしました。このスタイルを基本に4年前、IPPONを開店しました」
初めてに挑戦
──創作に当たり心がけていることは。
「日本、フランス、イタリア、中華と各種の食を感じること。絵画や華道など美しいモノに刺激を受け、それらを吸収した上で、自分なりの表現を加え、料理として形にしていくことです」
──今後の展開は。
「IPPON開店時から、自分は進化していると思っています。母が開いた幸華はお客様が揚げるスタイル、94はお任せ串揚で、IPPONは鉄板を使ったすき焼きと、これまで人がやってこなかったことに挑戦しています。母からの遺伝子でしょうか。『これを入れたらもっと楽しめる』など常に考え、『すき焼きは鍋で煮て食べるもの』といった固定観念を破り、飽きさせない料理を創作していきたいです」
【すき焼きKAPPO IPPON】
和歌山市十二番丁19
17:00~23:00(LO21:30)
定休日 日曜、年末年始
電話 073・426・2456
(ニュース和歌山/2023年10月28日更新)