絵は、江戸時代後期に有田川で行われていた鵜飼の夜景です。鵜飼は現在休止中ですが、有田川町金屋から有田市箕島付近で行われていました。
鵜飼は、鵜を訓練して主にアユを捕る漁法のことで、岐阜の長良川、愛知の木曽川、京都の宇治川などが有名です。
長良川では、鵜匠が鵜舟に乗って、夜かがり火をたいてアユを集め、ひとりで数羽の鵜を操ります。しかし、絵図のように、有田川では鵜匠は舟に乗らず、数人が一団となって川を歩いて遡り、右手に松明を持ち、左手で一羽の鵜の手縄(たなお)をさばき、鵜にアユを捕らせる徒歩(かち)漁法をとっています。
鵜はのどを縄でくくられていて、のどが魚でいっぱいになると、鵜匠は絵図左側のように松明を口にくわえ、腰につけた網袋へ鵜ののどからアユを吐き戻させます。
絵図右側の川岸には、家から担いできた鵜籠と捕ったアユを入れる受け籠が置かれています。
この漁法はほかの地域ではみられず、有田川の鵜飼は県の無形民俗文化財に指定されています。
画=岩瀬広隆、彩色=芝田浩子
(関西大学非常勤講師 額田雅裕)