道成寺(日高川町鐘巻)は、蛇行する日高川北岸にある天台宗の寺院です。
絵は、標高約十七㍍の河岸段丘面にある道成寺の伽藍をえがいています。右下の門前町から上がる石段は段丘崖です。その上には「仁王門」があり、「本堂」・三重塔・「本坊」「ごま堂」「念仏堂」「釈迦堂」などの建物が段丘面に建っています。
道成寺は、熊野詣でにきた若い僧安珍に恋した清姫が、逃げる安珍を追いかけ、大蛇となって日高川を渡り、安珍は道成寺に逃げ込んで釣鐘の中に隠れますが、大蛇は鐘に巻きついて安珍を焼き殺してしまう、という物語で有名です。これが道成寺のある「鐘巻」の地名の由来で、境内の縁起堂では毎日、道成寺縁起の絵解きが行われています。
日高川は、明治二十二(一八八九)年八月の紀伊半島豪雨で大蛇のように荒れ狂い、日高平野全体に氾濫し、門前町や田畑などに大きな被害を出しました。その洪水位は、仁王門前の六十二段ある石段の七段目まで達したことが、石段の左脇に刻まれています。参詣の折には、石段を上がる時に是非みてください。
(関西大学非常勤講師 額田雅裕)
(ニュース和歌山/2024年7月13日更新)