70歳を過ぎた頃から、食事の際、飲み込みにくい食べ物が増えてきました。何とか飲み込めても、むせてしまうことがあります。今後も楽しく食事を続けていくには、どうすれば良いでしょうか?


《回答者》
◆リハビリテーション部
今村病院
言語聴覚士
森 裕太郎先生

 食事が飲み込みにくくなる原因は様々です。今回は、ケガや病気ではないのに飲み込みにくくなることについて、原因と対策をお答えします。

 人は年齢を重ねるごとに、全身の筋力が低下してきます。これだけを聞くと、足腰が弱って歩けないような姿をイメージする方も多いでしょうが、実際は、手足や腰だけでなく、目に見えない部分の筋肉も同じように衰えていきます。

 食事の際、食べ物を口の中に取り込んでから飲み込むまでに、口や首のまわりにある多くの筋肉が働きます。これらの筋肉も、加齢によって次第に衰えるため、高齢になると食事が飲み込みにくくなると考えられます。また、気がつきにくいですが、「食事が喉に送られてきた」という情報を脳に伝える力も衰えていきます。これらは加齢とともに起こるもので、病気というわけではありませんが、楽しく食事を続けていくためには支障となります。

口まわりの〝筋トレ〟で衰えを予防

水やお茶などは飲み方に注意

 そこでいくつかの対策をお伝えします。

 まず筋力の衰えですが、何歳になっても筋トレは有効です。舌を前後左右に動かしたり、ほおをふくらませたりして、口まわりをよく動かしましょう。また、話す筋肉と食べる筋肉は共通しています。話すトレーニングは食べるトレーニングにもなりますので、新聞を音読したり、積極的に会話すると良いでしょう。すぐにできる体操として、「パタカラ、パタカラ、パタカラ」と繰り返し声を出す〝パタカラ体操〟もおすすめです。

 続いて、情報を脳に伝える力についてですが、こちらは残念ながら、有効な改善方法が確立されていません。対処法としては、温かい食べ物は温かいうちに、冷やすとおいしい食べ物はよく冷やして食べることをおすすめします。人の体温(いわゆる常温)に近い食べ物は、むせやすいといわれます。温度にメリハリをつければ、おいしさもアップしますよね。

 そして、要注意なのが水分です。水分は最もむせやすいため、水やお茶はもちろん、味噌汁なども注意深く飲む習慣を身に付けてください。また、パサつくものは、あんかけにすれば口の中でまとまり、食べやすくなります。せっかくなら、おいしく対策していきましょう。

 水分でむせやすくなった、微熱が続いている等、異変を感じたらご自身だけで判断せず、言語聴覚士のいる医療機関にご相談ください。

(ニュース和歌山/2024年7月28日更新)