国指定史跡の塩屋王子跡(御坊市塩屋町北塩屋)は、現在の塩屋王子神社にあたります。

 絵は、江戸時代後期の日高川河口付近の海浜風景です。左側には南塩屋の岩石海岸で熊野権現の旧跡「権現磯」、右側には塩屋「王子社」とその森、中央には王子川に架かる橋がえがかれています。海岸線に沿っては砂丘が発達し、松林がその内陸側の熊野古道と集落を護っています。

 熊野古道は、王子橋から左へ砂州上を通り、それに沿って「塩屋」の集落が路村状に細長く連なっています。「塩屋」は、かつての日高川河口に位置し、塩を焼いていたことに由来します。

 日高川は、煙樹ヶ浜にさえぎられ、その背後を南へ流れ、塩屋付近で王子川を合わせて、「権現磯」の北側で海に注いでいました。沖には広々とした紀伊水道の水面がひろがり、多くの帆船が航行しています。

 王子橋手前で熊野古道から塩屋王子神社の境内に入り、海岸段丘崖にあたる石段を上ると、平坦な段丘面がひろがります。その正面奥には石垣をめぐらせた社殿が建っています。

画=岩瀬広隆、彩色=芝田浩子

(関西大学非常勤講師 額田雅裕)

※彩色前の原画は国立国会図書館デジタルコレクションより転載

(ニュース和歌山/2024年8月10日更新)