上野王子跡(御坊市名田町上野)は上野川の右岸に位置し、津井王子(印南町印南)は枯木灘にみられる海岸段丘面に立地しています。後者は江戸時代に叶王子とも呼ばれましたが、明治四十一(一九〇八)年、八幡神社(同町山口)に合祀されました。その跡地には「叶王子神社旧跡」の石碑が建っています。

 斑鳩王子は、同町印南の光川の海岸段丘面に立地し、播磨国印南郡の斑鳩と音が似ていることから斑鳩王子となったようです。同王子も明治四十一年に八幡神社に合祀されましたが、その後分祀されて、現在地には小祠が建てられ、現存しています。

 絵は、印南川河口の印南浦の風景をえがいています。同川は全長十㌔㍍余の小河川ですが、古道には土橋が架けられ、橋の上には五人ほどの供を連れた武士や駕籠かきの姿がみえます。

 印南浦は、カツオやサバ釣りの漁業が盛んで、また熊野古道の宿場にあたり旅籠が多くあり、繁栄していました。

 背景には印南川上流に産土神の「ウスギ(宇杉)八幡」宮、同川左岸には「御所平」、「東宮社」がみえています。

画=岩瀬広隆、彩色=芝田浩子

(関西大学非常勤講師 額田雅裕)

(ニュース和歌山/2024年8月24日更新)