「言葉の力で和歌山を元気にしたい」と今年5月、和歌山元気プロジェクトを始動させた和歌山市寄合町の中野律さん(60)。米国生まれのショートスピーチ、ペップトークを使ったコミュニケーションを解説するセミナー講師です。明るい髪色、別名の「リッツ」にも自分を変える意味があるそう。夢を語り合える社会のために、言葉の大切さを説きます。

勇気づけの言葉

──「言葉の力で和歌山を元気にする」とは?

 「私は、目の前の人を思った言葉が、人の気持ちを変え、行動を変え、未来を変えていく様子を長年見てきました。これがペップトークです。ポジティブな言葉は人を明るくします。ペップトークが広がれば、素敵な笑顔がどんどん増えて、和歌山はもっと元気になると思っています」

──どんなものですか?

 「アメリカ発祥のコミュニケーションスキルです。スポーツの試合前に、監督やコーチが選手に対して行う激励のショートスピーチが代表例です。単なる気合いや根性論ではありません。言葉一つで相手のやる気や行動が変わりますから、選び方や投げかける順序に気を配ります。あくまで相手が主役なので、言葉が一人ひとり違います。その人をよく見ることが大切です」

──始めたきっかけは?

 「7年前、あるセミナーで隣になった方から聞いたのが最初です。調べてみると、普段生徒に対して使っている言葉がけに似ているところが多く、もっと深く学んでみたくなりました」

──「似ていた」というのは?

 「2019年までの20年間、大学受験予備校の副校長をしていました。『どんなことがあっても一緒に走りぬく!』という覚悟で、前向きな言葉をかけ続け、約4千人の生徒を送り出しました。浪人の一年は決して楽なものではなかったはずですが、『ここに来てよかった。ありがとう』との声をたくさんいただきました。当時はわかっていませんでしたが、この日々の言葉がけが、実は、ペップトークだったんです」

なりたい自分に

──別名のリッツは、名前の「律」から?

 「いいえ、ホテルリッツ・カールトンのリッツです。あの気品と風格に憧れ、名乗らせてもらっています。名前が変わるだけで気分や行動が変わりますね。単純です(笑)。私は小さいころから、いわゆる『真面目ないい子』でいなければと思い込んでいたようです。母や先生の顔を気にして『これやりたい』を言えずにきました。でも、ペップトークを学んで『なりたい自分で生きてみよう』と心が決まり、念願だった茶髪(写真)にも挑戦しました。今は、これまでとはちょっと違う生き方がお気に入りです」

──今後は。

 「やる気を引き出す言葉がけで、和歌山に〝元気でヤンチャな大人〟を増やしたいです。そんな大人がいることが、自分の可能性を信じたい若者の勇気になると思っています。また、環境づくりも大切で、やりたいことや夢を自由に語り合える居場所『MIRAIクリエイトラボ』を昨年4月に開設しました。言葉の力で未来は創造できると信じています。誰もが自分に自信と誇りを持ち、何事にもチャレンジできる、そんなイキイキとした社会のために、前向きな言葉をかけ続けます」

 ◆イベントなど詳細は中野さん(miraicreatelab@gmail.com)。

(ニュース和歌山/2024年10月19日更新)