妖怪をこよなく愛する漫画家マエオカテツヤさんの「妖怪大図鑑」。2025年の干支「巳」にちなみ、「蛇」が登場するお話を2つ紹介します。
蛇の母
山の妖怪
怖さ:1
出没地域:白浜町
その昔、日置に宝勝寺というお寺があり若い僧侶が住んでいた。
ある日の夕方、美しい娘が現れた。二人は恋に落ち夫婦になった。そして子供にも恵まれたが、子供は目が不自由だった。
僧侶は我が子を不憫に思い嘆いていると、女は「私は山に棲む蛇でございます。あなたとの暮らしは幸せでした。しかし正体を現してしまえば、ここにはおれません…」と己の目を子供に与えた。「私は山へ帰ります。ただ目が見えぬと朝夕が分からず、水を飲みに行けません。朝夕一度ずつ鐘を鳴らしてください」と言い残し、山へと消えた。
僧侶は毎日欠かさず、朝夕鐘をついたという。
浮島の森
沼の妖怪
怖さ:4
出没地域:新宮市
新宮市の浮島の近くに、おいのという娘がいて、この浮島で木を刈っていた父に毎日お弁当を運んでいた。
ある日、父と一緒にお弁当を食べようと包みを開けたところ、箸を忘れたことに気がついた。
「ちょっと箸になる枝を取ってくる」と森の奥へ入っていった。なかなか帰ってこないので、父が見に行くと、沼においのの着物の端が沈んでいくのが見えた。父が大声でよびかけると、沼から大蛇に乗ったおいのが現れ、父が手を差し伸ばすのもむなしく、再び大蛇とともに沼に消えたという。
後にこの沼は「蛇のがま」と呼ばれ、現在も浮島の森に残っている。
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マエオカテツヤさんの『和歌山妖怪大図鑑』は県内主要書店で発売中。1017円(税込)
(ニュース和歌山/2025年1月4日更新)