《回答者》
◆整形外科
貴志川リハビリテーション病院
手外科専門医・足の外科認定医
整形外科専門医
谷口 泰德 副院長
手首の骨折である橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)のギプス固定による治療終了後、腱が切れ親指が伸ばせなくなることがあります。これは長母指伸筋腱(ちょうぼししんきんけん)と呼ばれる親指を伸ばす腱が、骨折部でこすれて摩擦で断裂し、伸ばす動きができなくなるためです。皮膚が傷つかず、皮膚の下の腱だけが切れるので長母指伸筋腱皮下断裂といいます。この親指の腱断裂は、高齢女性で転位の少ない骨折に多い傾向があります。腱が切れても痛みは感じないので、親指が不自由になって気づき来院されます。
治療は手術が必要です。手術は局所麻酔で30〜40分で終了します。皮下断裂した腱の断端はバサバサになっているため、切れた腱同士を直接つなぐことはできません。そのため、専門的治療である腱移行術が必要になります。腱移行術とは、人差し指の腱を1本切断して、親指の腱に移してつなぎ替える手術です。人差し指の腱を1本犠牲にしますが、人差し指の腱は2本あるため人差し指が動かなくなることはありません。術後3週間ギプス固定を行います。2〜3ヶ月で親指は違和感なく伸びるようになります。手術治療の詳細は手外科専門医にお尋ねください。
(ニュース和歌山/2025年3月22日更新)