1月17日で阪神・淡路大震災から21年。大災害時、倒壊した家屋や土砂に埋もれた人を、きゅう覚を生かして捜し出すのが災害救助犬だ。体長約30㌢のミニチュアシュナウザー、くぅちゃんは毎年11月に県警が実施する嘱託警察犬資格審査会の捜索救助に4年連続で合格。小型犬では唯一で、指導する藤谷警察犬訓練所(和歌山市西)の藤谷桂一郎所長は「ガレキの中でくぅの機動力は生きる。万が一に備え、場所を変え、方法を変えながら日々訓練を続けています」。いつ来るか分からない出動機会にきょうも備える。
警察犬は、都道府県警が飼育、管理する直轄警察犬と、一般の人が飼い、訓練を受けて審査会での試験を通過した嘱託警察犬に分けられる。嘱託警察犬の試験には犯人の足取りをたどる「足跡追求」、臭いのついた布をかぎわける「臭気選別」などがある。和歌山県警には直轄警察犬がおらず、嘱託警察犬のみ。
日本警察犬協会はシェパードやドーベルマン、ゴールデンレトリーバーなど中・大型の7種を指定犬種としているが、和歌山県警の審査会は、県内で飼育されており、血統書があれば7犬種以外でも受けられる。
嘱託警察犬について取りまとめる県警鑑識課によると、毎年、審査会を突破する犬は30頭程度。捜索救助に合格した警察犬は2011年、台風12号で水害に見舞われた紀南地域でも活動した。
交通センター近く、田んぼの中に藤谷警察犬訓練所はある。「捜せ!」。藤谷所長から合図が出るやいなや、駆け出すくぅちゃん。複数の隠れ場所から人を見つけると、「ワン、ワン、ワン、ワン!」。ほえて知らせるその顔は、愛くるしいながらも頼もしい。
全国でも珍しい小型犬の警察犬くぅちゃんは8歳のオスで、日高町に住む高見知佐子さんの飼い犬。07年5月に飼い始めたが、知佐子さんの息子や親をかみ、道行く人を窓越しにほえ続けることから、翌6月、藤谷警察犬訓練所へ預けられた。物覚えの良さが藤谷所長の目に留まり、訓練競技会に出場することに。9月、奈良での大会は2位、さらに11月に京都で開かれた西日本大会で優勝を果たした。
翌年は嘱託警察犬資格審査会の臭気選別に挑戦。1回目での合格はならずも、2度目の09年は突破し、晴れて警察犬となった。合格すると任期は1年間で、臭気選別は14年まで毎年合格を続けてきた。
一方、7分以内に隠れた2人を見つけ出す捜索救助も12年から4年連続で合格。昨年末の審査会は、火薬の臭いをつけ爆弾に見立てた物を捜し出す爆発物捜索にも初挑戦で合格した。藤谷所長は「審査会は1年に1度。不合格ならまた1年後になる。ほっとしました」と安堵の表情。
飼い主の高見さんは、以前は競技会や審査会を見に行っていたが、「最近はくぅが会場で私たち家族を探し、大会が終わると会えるんだと集中しなくなっていたので、今回の審査会も控えました」。家に戻った時はまだやんちゃな面を見せるものの、「かなり落ち着いてきました。万が一の際、少しでも役に立ってほしいし、小学校での交通安全啓発イベントなどでもかわいがってもらえれば」と見守っている。
写真上=ガウンをまとい、りりしいくぅちゃん 同下=日々訓練は欠かさない
(ニュース和歌山2016年1月16日号掲載)