和歌山電鐵貴志川線に対し、和歌山県と和歌山市、紀の川市が2016年度から10年間支援することを取り決め、1月18日に基本合意書を交わした。小嶋光信社長は「行政が設備の修繕、事業者が運営を担う準公設民営になる。行政の負担、市民の協力、事業者の経営努力で、これからも安心して利用できる仕組みづくりを目指す」と決意を新たにした。
06年に南海電鉄から運営を引き継いだ和歌山電鐵。今年度末までの10年間、県と両市は設備の修繕や運営費の赤字補てんなど総額12億9000万円を支援してきた。192万人にまで落ち込んでいた年間利用者数は、沿線住民の利用促進運動や、たま駅長、企画電車などの人気で約230万人に増え、年間5億円だった赤字は6400万円に圧縮された。
新しい支援は、次の10年間で約18億7000万円かかるレールや枕木、踏み切りの保安設備などの修繕費を、国が3分の1、県と両市が3分の2(上限12億4790万円)負担する。一方で運営費への赤字補てんはなくなる。仁坂吉伸知事は「貴志川線は和歌山にとって大きな資産で、存続は県民の願い」、尾花正啓和歌山市長は「駅を核としたまちづくりを進め、利用促進を図りたい」と構想を語った。
これにさきがけ、和歌山電鐵は15日、近畿運輸局長に4月1日からの運賃値上げを申請した。認可されれば、消費税率変更時をのぞき、約20年ぶりの改定となる。
初乗りは170円から190円に、12㌔以上の370円区間は400円になるなど、20~30円上がる。通勤定期券の割引率は地方ローカル鉄道としては全国最大の47%を全国平均の36・3%に近い40・0%に、通学定期券は67・5%を64%に改める。1ヵ月定期の値上げ幅は通勤が1080~2600円、通学が820~1340円となる。
値上げによる年間3000万円の増収と経営努力で、行政からの支援がなくなる赤字の解消を目指す。同社は「人口減少や沿線道路の整備、電力料金の増大など逆境を迎える中、経営努力と自治体の支援だけでは赤字運営からの脱却は非常に困難。他社の運賃水準を参考に、最低限のご負担をお願いせざるを得ない」と話している。
写真=合意書を交わした小嶋社長(右から2番目)
(ニュース和歌山2016年1月23日号掲載)