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 絶滅が心配されるフクロウの仲間、アオバズクについてユニークな研究を進める中学生がいる。海南市野上中の東海南中学校1年、宗尚輝さん(写真)が着目したのは、エサとなる虫や鳥などの食べられない部分を取り除く際に出る食痕(しょくこん)。2ヵ月以上にわたって調べ標本にまとめた。「アオバズクは里山にいる虫を中心に食べていることから、里山の自然環境が重要だと改めて分かりました」。研究内容は2月28日(日)の「生物多様性フォーラム」で発表する。

 アオバズクは春になると東南アジアから日本に来る渡り鳥。子育てを終えた秋以降に東南アジアへ戻る。絶滅のおそれがある生物をまとめた県のレッドデータブックで、2001年は「準絶滅危惧(きぐ)」だったが、12年には危険度が1段階上がって「絶滅危惧Ⅱ類」に。巣となる穴がある大木やエサとなる昆虫の減少が原因と見られる。

 宗さんは、海南市大野中のわんぱく公園で自然調査を行う小学生向けの「わんぱくクラブ」で小学2年から活動してきた。幼いころから野菜を育てるのが好きで、栽培する中で益虫、害虫がいることを知り、その昆虫を食べるアオバズクへと関心を広げた。

 通う東海南中学校区内のとある蔵の屋根裏では毎年、アオバズクがひなを育てている。夜行性で、エサを捕りに行くのは日が暮れた後。チョウや蛾(が)の羽、カブトムシやクワガタムシといった甲虫の頭などを取り除いて食べる。その〝調理〟をするのが蔵近くの電線で、2015年5~7月、毎朝6時に起き、電線の下にある食痕を調べた。

 確認したのは昆虫402、コウモリ6、鳥4、クモ2、ヤモリ1、不明2の417。昆虫は甲虫、チョウ、バッタと多彩で、「数、種類ともこれほど多いとは思いませんでした。ひなにいろいろなものを与えることで、何が食べられるのかを教えているのかもしれません」。

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 食痕数から見えてきたことも。当初、0~6の間で推移していたが、6月16日に16へ急増したことから、「その前日にひながかえったのでは」。最多は28日の32で、翌29日は8と少なかった。「29日は寒くて風が強かった。そんな日は虫も少ない。それをあらかじめ分かっていたのかも」と推測する。

 食痕の標本は、昨年9月に県立自然博物館が開いた標本作品展で、最優秀となる館長賞に輝いた。高須英樹館長は「標本というと植物、昆虫、貝殻、まれに化石といったところですが、宗くんは着眼点がすばらしい。データとしても貴重で、整理すれば生物に関する雑誌に出せるほどの内容」と高く評価する。

 宗さんの調査を見守ったわんぱく公園の有本智園長は「電線に止まった1羽のアオバズク。長く鳥を見てきた私でもそれがオスかメスかはすぐには分からないが、2ヵ月以上、多くのデータを取った宗くんは識別できるようになった。エサの頻度や親鳥の仕草で巣の中を類推できるようにもなった。これはすごいこと」と成長に目を細める。

 1ヵ月後にせまった生物多様性フォーラムに向けて発表内容を考える宗さん。「将来の夢は無農薬栽培で農業をすること。近所の農家も高齢で、いつやめるか分からない。アオバズクにとって大切な里山を守れる農家になりたい」。自然を見つめるその目は優しさと好奇心にあふれている。

写真=宗さんが観察したアオバズク

 

 ◎生物多様性フォーラム

 2月28日(日)正午、紀の川市貴志川町長原の貴志川生涯学習センター。

 1部は中央大学の鷲谷いづみ教授が「日本における生物多様性保全の現状」と題して講演。先着100人。第2部は宗さんのほか、わんぱくクラブ、向陽中学校理科部、和歌山大学システム工学部の学生が1年間の研究成果を発表する。さらに鷲谷教授、和大システム工学部の中島敦司教授らが生物多様性の保全について意見を交わす。

 先着350人。無料。希望者はわんぱく公園(073・484・5810)。

(ニュース和歌山2016年1月30日号掲載)