春、旅立ちの季節。プロバレーボール選手としての第一歩を踏み出す18歳がいる。和歌山信愛高校を1日に卒業した石川真奈選手は、国内最高峰のVリーグ・プレミアリーグ、東レアローズに入団。全日本で活躍する木村沙織選手、迫田さおり選手が所属する強豪だ。石川選手は「まずは先輩たちのような体力、技術を身につけること。その先に東レのレギュラーや全日本がある。そういうところで活躍できる存在になりたい」と目を輝かせている。
身長179㌢、加えて抜群の跳躍力を誇り、最高到達点は3㍍と高校トップクラスの高さが武器。バレーボールは印南小学校2年の時、地元の印南はまゆうクラブで始めた。「小学6年生で167㌢。学校で一番大きかったですね」。長身とバネを生かし、アタッカーとして活躍してきた。
信愛高校では入学間もない1年のインターハイからベンチ入りメンバーに。田村学監督は「そのころ、すでに177㌢ぐらいありましたが、背の高さの割に動けました。バレーセンスの良い選手です」。2年のインターハイ、3年の全日本高校選手権(通称「春高バレー」)と2つの全国大会でチームのベスト16入りに貢献した。また、3年で全日本高校選抜メンバー入りも果たした。
プレーが目に留まり、Vリーグ所属の3チームから声が掛かった。その1つが東レ。入団を決めた昨年11月にはチーム練習に参加し、全日本の主力であり、あこがれだった木村選手、迫田選手らと汗を流した。
「2人ともスパイクを打った後、モニターで細かくフォームをチェックし、全体練習後の自主練習もしていた。実力があるからと言って楽することは決してなく、他の選手以上に努力する姿が印象的でした」。プロ選手のプレー、そして意識の高さに不安を感じながらも、「ここなら多くのことを吸収できる。先輩方から技術面はもちろん、試合に向けて気持ちをつくっていく方法や試合時の精神力なども学びたい」と前向きだ。
東レの福田康弘監督は「体が細く、荒削りではありますが、全身を使った跳躍から放たれる高さのあるスパイクが魅力の大型選手。先輩選手と切磋琢磨(せっさたくま)し、東レで結果を出して、2020年の東京オリンピックを目指してもらいたい」と大きな期待を寄せる。
プロの世界で歩み始める教え子に対し、信愛の田村監督は「今はまだVリーグで勝負できるレベルに達していないが、将来性を買ってもらった。伝えたいのは〝自分にできることを精一杯やりなさい〟ということ。身体面もそうですが、ハートの部分がしっかりしてくれば活躍できるはず」とエールを贈る。
様々なことを学んだ信愛での3年間。石川選手の心に刻まれているのは、田村監督からの言葉〝人間の最大の悪は鈍感〟だ。「アドバイスしてもらっても、素直に受け止められないと成長できない。10年間バレーをしてきて、素直でいることが成長できる近道だと思う。いろいろなことを教えてくださった和歌山の皆さんのことを忘れず、東レで頑張りたい」
バレーへのまっすぐな思いを胸に、コートで躍動する姿が待ち遠しい。
写真=最高3㍍の高さから打つスパイクが石川選手の持ち味だ
(ニュース和歌山2016年3月19日号掲載)