2014年度、県内で殺処分された猫の数は2568匹に上った。なくならない猫の殺処分をゼロにすることを目指し、野良猫へのエサやりの規制や罰則などを盛り込んだ県動物愛護管理条例が一部改正され、2017年4月に施行される。昨年の改正案発表以来、県は2度の意見募集を行い、慎重に議論を進めてきた。「不幸な猫をなくしたい」気持ちをもとにした条例は、果たしてどう県民に広がっていくか、今後が注目される。
猫の殺処分は少しずつ減少しているものの、人口あたりの処分数は4年連続で全国ワースト4位。2014年度、県や市町村に寄せられた猫への苦情や問い合わせは1875件に上り、このうち952件が「飼えなくなった」「野良猫が子猫を産んでいる」などの理由による引き取り依頼だった。
今回の改正では、野良猫に継続的にエサをやる場合は繁殖できない猫に限り、周辺住民に説明するといったルールを設けた。このほか、地域の合意を得た人が猫に不妊・去勢手術を受けさせ管理する「地域猫」の実施計画への認定制度の導入、違反者への罰則、飼い猫への所有者の明示などが新設された。
野良猫約50匹がすむ和歌山城ではここ数年、有志数人が毎日2回、エサやりや病気の世話、清掃などを行う。今年に入り、すでに10匹以上の捨て猫があった。段ボールに入れられた親子や、エサとともに衰弱した子猫が見つかることもあった。
2014年から不妊・去勢手術を始め、今月は3匹が手術を受けた。1匹約2万円の手術代やケージ、エサ代と負担は大きい。世話をする女性は「これまでは散歩の際にこちらに声をかけて寄付してくれる方や、猫をもらってくれる方もいた。ここで地域猫の認定をとり、モデルケースにしたい」。
別の女性は1月、フェイスブックページ「城下町にゃんこの会」を立ち上げ、城にすむ猫の写真や性格を紹介し現状を訴える。女性は「条例で行政が認めることで、カンパを求めたりチラシを配ったり、これまでできなかったことができる面もある」と受け止める。
改正案ばかり注目されるが、県は条例施行に先駆け、4月から「不幸な猫をなくすプロジェクト」を実施する。野良猫の不妊・去勢手術費用を助成し、捕獲用おりを貸し出して繁殖を防ぐ地域猫対策を進めるとともに、新たな飼い主を探すホームページの開設、県動物愛護センターから子猫を一時的に預かるミルクボランティア制度などを設け、譲渡につなげる。
神奈川県では県とボランティアの連携が効を奏し、2014年度に犬猫とも殺処分ゼロを達成している。和歌山では今後、室内飼いや繁殖させない工夫をする、最期まで責任を持つなど飼い主のモラルの向上、条例への理解と制度の利用促進、愛護センターでの譲渡数の増加がカギとなりそうだ。
県へはすでに「どうやったら支援を受けられるか」との問い合わせが続いている。担当する県食品・生活衛生課は「まずはこれから県民全体にプロジェクトや条例をきっちりと周知していくことが課題。様々な人が訪れる和歌山城などでは、場所に合わせた手立ても考えていく必要があるだろう」と話している。
写真=ボランティアが世話する和歌山城の猫
(ニュース和歌山2016年3月26日号掲載)