明治から昭和初期にかけて使われていた和歌山県議会議事堂が、岩出市根来の若もの広場隣に移築復元され、4月1日から一般公開されている。現存する木造和風建築の議事堂では国内最古。県文化遺産課は「当時の姿を取り戻すべく、史料や柱の痕跡をもとに忠実に復元した。明治、大正、昭和と県政を見守り続けた議事堂の歴史的、文化的価値にふれてほしい」と語っている。
1898年に現在の中央郵便局がある和歌山市一番丁に建てられた県議会議事堂。洋風建築が主流の明治時代には珍しく、木造和風の壮麗な白木の建物だった。1911年には夏目漱石が「現代日本の開化」と題し、講演した。
38年に議場がある現県庁舎新築後、現在のJA和歌山の事務所として41年に同市美園町へ。この後、62年に根来寺境内へ移築され、一乗閣の名で大客殿としてのほか、集会や合宿に使われていた。2005年には県指定文化財に指定された。
2度の移築により改変され、また、老朽化が進んだため、修理、保存しようと13年に県が工事を開始した。復元調査する中、移築により、議場の向きが逆転し、控え室がなくなっていたと判明。75年前の図面や、はりと柱の痕跡をもとに、建築当初の姿に戻した。
2階建てで、本館、議場、控え室の3つに分かれており、2階には傍聴席がある。漆くいの壁と瓦屋根の和風の外観に、洋式の建築構造を一部組み合わせた和洋折衷の造り。正面の車寄せと議場の床の間の彫刻、板の木目の向きを変え、市松模様に張った議場の天井などが見所だ。
1日の開館式典では、U字型に議席を並べ、当時の議会を再現。オーボエ奏者、米山龍介さんとソプラノ歌手の米山茉莉子さんらが記念演奏を披露した。参加した根来の子守唄保存会の梶本洋子会長は「当時の柱や天井がそのままで、110年以上前の厳かな雰囲気が身にしみて伝わってきました」と話していた。
今後はコンサートや講演会、観光物産展などに活用する。また、同館隣に根来寺の史跡を集めたねごろ歴史資料館も1日、オープンした。
写真=復元された旧県議会議事堂の議場
(ニュース和歌山2016年4月9日号掲載)