信州発の農民美術に魅せられた和歌山市市小路の池尾英之さん(68)が、長年収集してきた木彫や木工品、絵画をゴールデンウィークに自宅で公開する。集めた作品は300点以上になるが、これまでは自分と友人が楽しむだけ。池尾さんは「独特の木の文化に親しんでほしい」と話す。
農民美術は1919年、長野県上田市の芸術家、山本鼎(かなえ)が提唱した芸術で、農村の生活感あふれる日常や、信州の山々、また、野に咲く花を題材とする木彫が代表的。
池尾さんは30年余り前、旅先の箱根で、くわをかついだ母と、娘が彫られた作品に目を奪われた。これが上田市発祥の農民美術と知り、翌年、作品を求めて現地へ。子どもたちが野球をしたり授業を受けたりする人形、縁台将棋やたらいで洗濯する人形など古き良き時代の郷愁を誘うものが目についた。
以来、作品を求めて何度も信州に出かけた。「春の信州が好き。上には雪をかぶった山が見え、下には赤や白、ピンクの芝桜。色のコントラストが最高」と池尾さん。ある時、黒い板に北アルプスや、槍ヶ岳、南駒ヶ岳、白馬三山などを彫り込んだ荘厳な作品に出合い、さらに「はまった」という。
他にも、富士山や北海道の自然を描いた洋画、テーブル、イス、棚などの木工製品、陶器を収集。2009年に自宅を新築した際は、展示を第一に考え、ギャラリーの雰囲気を作り出した。
上田市は真田幸村の出身地。池尾さんは「真田が注目される今年、これも何かの縁。来場者には木と触れ合い、昭和の雰囲気を味わって」と呼びかける。
公開は29日(金)~5月5日(木)の午前10時~午後4時。希望者は池尾さん(073・453・1450)。
写真=約30年間で集めたコレクションを披露する池尾さん
(ニュース和歌山2016年4月23日号掲載)