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 日本郵便主催の全日本DM(ダイレクトメール)大賞で、和歌山市のデザインユニット、リ・ビーンズが制作した「紀州高野組子細工プロモーションDM」(写真上)が銀賞とブランディング部門日本郵便特別賞をダブル受賞した。伝統工芸の紀州高野組子細工師、池田秀峯さん(69)の展覧会と作品の魅力を伝える連作DM。和歌山が誇る匠の技を伝えようと組子細工の実物をそえるユニークな発想を生かし、大手企業がひしめき合う同賞で高評価を勝ち取った。

 過去1年間に企業が発送したDMから優秀な作品を選ぶ同賞。1987年に始まり、ソフトバンクや電通、ベネッセら大手企業が数多く参加し、30回目の今回は625点の出品があった。

 リ・ビーンズは、和歌山市の岡記生(のりお)さん(56)、公美さん(55)夫婦のデザインユニット。〝和歌山自慢〟をデザインのテーマにする中、2013年、高野山麓に伝わる紀州高野組子細工と出合った。

 組子細工は、細かく割った木材を手作業で組み合わせ、幾何学模様を編み込む装飾技法。鎌倉時代に生まれ、江戸時代に高野山麓に伝わり、高野六木を使うなど和歌山の風土とともに技は受け継がれた。現在は7代目となる池田さんが技を継承し、濃淡の異なる微細な木片を組み入れ、人や風景を組み上げ、表現の幅を広げて16043002_rebeansいる。

 「富山や九州にも組子細工があるが、池田さんの作品は美しい。日本屈指です」と記生さん。しかし、この工芸があまり知られていないと感じ、バックアップに乗り出した。昨年、和歌山と東京で開かれた池田さんの展示会をプロデュースし、DMを制作。和の雰囲気が漂う洋紙に、実物の組子細工の組目がみえる小さいパーツをそえた。礼状も同じような形にして連作とし、魅力を徹底的に伝えた。

 公美さんは「DMは第一印象がすべてです。実物でインパクトを与え、簡単に捨てられず、手元に置いてもらうように考えました」。同賞はデザインだけでなく、PR効果や販売実績も対象となる。和歌山での展示会では地元企業が作品を購入し、海外の展示ディスプレーに使用した。東京では設計事務所への認知が広がった。公美さんは「デザインで伝統工芸の良さを伝えられるかにこだわりました。日本の手仕事の美しさにもっと多くの人が誇りを持ってもらえれば」と力が入る。

 審査員からは「DMは中小零細が大手と互角に勝負できる知恵のマーケティングであると示した」と高評価を得て、見事、ダブル受賞。「今までやって来たことが間違いではなかったと思えた」と2人は口をそろえる。

 現在は、大阪での展示会開催を目指している。記生さんは「ものづくりへの妥協のなさに見習うことが多く、池田さんを自分の師と思っています。次のステージを開くお手伝いがしたい」。池田さんは「岡さんは自分のことのように力を入れてくれ、私が師と呼びたくなる。新しい出会いや展開があり、希望を感じている。能力以上を求められることもあるが、努力していきます」と喜んでいる。

写真下=左から池田さん、岡記生さん・公美さん夫妻と、協力した写真家の勝田憲央さん

(ニュース和歌山2016年4月30日号掲載)