ラジオ体操が全国的にシニア層で広がりを見せている。和歌山県内では県教委が2014年度に指導員を養成し、体験会を開くなど普及を後押し。ラジオ体操を定期的に行うグループは、県教委スポーツ課が把握しているだけで14年度が52だったのに対し、15年度は152と大きく増えた。同課は「実際にはこの何倍かはあると考えられます。ラジオ体操に親しんできた世代に好かれている健康ツールだと感じます」と手応え十分だ。
♪新しい朝が来た 希望の朝だ♪──。午前7時55分、ビッグホエール前にラジオ体操の歌が流れると、いつものように適度な間隔を取って並び始める参加者たち。ラジオ体操指導士の中川聖子さんを前に、ラジオ体操第一、第二、そして体の不自由な人もイスに座ったままできる「みんなの体操」と、10分あまり汗を流す。
ビッグホエール前での体操会は地元国体を1年後に控えた2014年8月に開始。土日祝をのぞく毎日あり、晴れの日は約40人が集まる。当初から通う73歳女性は「朝起きようという気力につながる。一緒に体操する皆さんと桜を見に行ったことも。気持ちが明るくなりました」、83歳男性は「終わった後、阪神タイガースの話で30分ほど盛り上がりますよ」とにっこり。会を主催する県スポーツ振興財団の横尾英治理事長は「参加者の笑顔が何より。6月からは毎月、休まず来られた方に皆勤賞の賞状を贈ろうと計画しています」。
県民の運動不足解消につなげようと県教委は13年度、スポーツ指導員ら対象のラジオ体操指導員講習会を開催。翌年は一般対象の指導員講習会を開き、目標の200人を超える726人が受講した。17ヵ所で実施した正しいラジオ体操体験会も1578人が集まった。
さらにこの年から、県職員が地域に出向いて県の事業について解説する「出張!県政おはなし講座」のメニューに「ラジオ体操による健康増進と地域コミュニティづくり」を加えた。14年度、15年度合わせ28団体、1500人近くが受講。14年4月に受けた新宮市ではその後広がりを見せ、現在は11ヵ所で体操会が定期的に開かれている。
海南市では13年度から介護予防施策の1つとしてラジオ体操に注目。企画した講習会をきっかけに、現在は22までグループが増えている。こうした会を年1回訪れ、体操の仕方を指導しているゆうゆうスポーツクラブ海南の南由佳さんは「おなじみの音楽が流れるとだれでもできる手軽さ。それが家から出るきっかけとなり、介護予防にもつながる」と語る。
ビッグホエールで指導に当たる中川さんは、指導員の上級資格にあたる2級指導士を持つ県内5人の一人。「体操の前後にゴミ拾いをする方もいらっしゃいます。指導を始めた当初は正しいラジオ体操の方法を教えたいと思っていましたが、最近は自分のペースで毎日続けることが何より大事なんだと思いますね」
ラジオ体操会は中之島の県立体育館や毛見の紀三井寺公園などでも月〜金に開かれている。教室や体操グループづくりに関する問い合わせは県教委スポーツ課(073・441・3753)。
写真=中川さん(右手前)の手本に合わせて体操に汗を流す。ビッグホエール前で平日朝に見られる光景だ
(ニュース和歌山2016年5月28日号掲載)