骨折やねんざ、打撲といったケガを治療する日本の伝統技術、柔道整復術をモンゴルへ伝える日本柔道整復師会の国際プロジェクトに、県内で初めて和歌山市の阪上哲哉さん(26)が参加した。現地での1ヵ月の経験を6月9日(木)午後7時から、同市手平のビッグ愛9階で話す。阪上さんは「自分の腕一本で治療する柔道整復の価値を再確認できた。モンゴルは経済発展がすさまじく、学ぶ意欲の強いエネルギッシュな若者ばかりだった」と笑顔を見せる。
外科手術でなく、骨をつなぎ合わせたり、関節を元の位置に戻したりすることでケガを回復させる柔道整復術。プロジェクトは日本で柔道整復師の治療を受けた元横綱、朝青龍が母国へ紹介したのをきっかけに、2006年に始まった。医療設備や技術が充分でないモンゴルで10年かけて普及させるのが目的。これまでは年2回、柔道整復師を派遣するほか、モンゴル人を日本の整骨院で受け入れ指導。医師や看護師、医大生1800人に伝えてきた。
県柔道整復師会会員で和歌山市新八百屋丁のさかうえ接骨院で働く阪上さんは、プロジェクトの最終年で派遣された。今年2月末から1ヵ月間、首都ウランバートルの国立医科大学と地方都市のサインシャンドの病院や保健所を訪問。骨つぎやリハビリ、応急処置法を教え、警察や市民向けの勉強会も開いた。
落馬や交通事故、氷の上で滑るなどでケガをしたものの、的確な治療が受けられず足や腕が曲がったままの人が多い。講習後に「治療をしてほしい」と駆け込む人もいた。「『人を助けたい』と思う純粋な気持ちこそ治療の原点だと感じた。こんなに人に喜ばれたのは人生で初めて」と阪上さん。
プロジェクトは終了するが、10年の成果が認められ、国立医科大学に9月、柔道整復コースが誕生する。阪上さんは「地道な支援活動こそ国と国の友好関係を深める。日本の技術を世界に伝え、国際平和につなげたい」と力を込める。
9日の報告会は無料。申し込み不要。和歌山青年海外協力協会(073・435・5240)。
写真=阪上さん(右下)の指導に見入るモンゴルの人たち
(ニュース和歌山2016年6月4日号掲載)