1606112_mizubeza 県内の酒蔵10社の日本酒を集めたバー「水辺座」が和歌山市元博労町にオープンした。マスターは今春、県職員から転身し、まちづくり会社を立ち上げた武内淳さん(32)。「まずは自分で空き物件を活用し、にぎわいを呼びたいと飛び込んだ。和歌山にはいいものがいっぱいある。和歌山が誇る地酒とともに、川に目を向け、水辺の楽しみを提案します」と張り切る。

 水辺座は、和歌山市が開くリノベーションスクールを昨年11月に受講した武内さんのグループが活用法を検討した物件。対岸に老舗酒造会社、世界一統があるのをヒントに、日本酒を気軽に楽しむ場にしようと息を吹き込んだ。

 武内さんは大阪大学大学院で都市計画を専攻。県庁では県土整備部で空き家対策などに携わるかたわら、東北芸術工科大学で公民連携事業について学び、先進地を回った。

 「衰退する和歌山を見るうちに何かしたいとの気持ちが高まっていたところ、スクールでこの場所に出合いました」。今春退職し、仲間とともにまちづくり会社「宿坊クリエイティブ」を設立、第1弾として水辺座を5月に開いた。

 着目したのは内川に面したロケーションだ。川沿いの建物はすべて川に背を向けて立っており、〝まちの裏側を流れる川〟と魅力を感じた。壁を抜いて全面ガラスに換え、杉板を敷いた座敷席に。「少し高さを持たせてステージのようにした。店名は水辺が舞台になるという意味があります」

 入口に松を植え、らんまや和だんすを活用したカウンターや壁飾りが、コンクリートの質感と相まって和風かつモダンな雰囲気に。日本酒はもちろん、梅酒やみかんジュースなど県産にこだわった。日本酒造りの職人、蔵人(くらびと)との交流イベントなども計画中だ。

 オープンから1ヵ月、祖父から譲り受けた袈裟(けさ)を襟に付けた特製ベストを着てカウンターに立つ。「空き物件だけでなく、道路や公共施設など公共的な空間を使いこなして魅力あるスポットをつくり、一帯が盛り上がるようつなげたい」と目を輝かせる。

 午後5時~深夜0時。月曜休み。詳細は水辺座フェイスブック。

(2016年6月11日号掲載)