和歌山市のソプラノ歌手、矢倉愛さん(写真右)が、ブルガリアのスタラザゴラ市国立歌劇場で27日(月)に行われるオペラ『蝶々夫人』の主役に抜てきされた。明治時代の長崎を舞台にした作品で、日本人の出演者は矢倉さんただ一人。「ヨーロッパの国立歌劇場で主役を務めるなんてなかなかできない体験。日本人の演じる蝶々夫人を現地の人に見てもらいたい」と意気込む。
矢倉さんは大阪音楽大学短期大学部を卒業後、数々の演奏会を開くかたわら、岩出市コーラスクラブと岩出第九合唱団を指導。今年1月には毎月、カフェで初心者に分かりやすくオペラの魅力を届けるイベントも始めた。
5月、ブルガリアの国立ソフィア・フィルハーモニックオーケストラで常任客演指揮者を務める守山俊吾さんに誘われ、日本人8人でコンサートに出演。そこで歌劇場のディレクターの目にとまり、翌月の公演『蝶々夫人』の主役を打診された。
『蝶々夫人』はイタリアの作曲家、プッチーニが手がけたもので、日本人の15歳の芸者と海軍士官をめぐる悲恋を描いた作品。今回は原作通り、主役を日本人が演じる現地では珍しい舞台となる。
「外国人が演じる蝶々夫人は芸者のイメージが強いのか、着物やメイクもどこか違和感がある。着物での立ち振る舞いや所作、日本人の細やかさを表現したい」と矢倉さん。日本から着物を持参して単独で渡り、14日から練習に加わる。
矢倉さんにとって5月に続き2度目の海外公演。『蝶々夫人』はシーンを省略し披露したことはあったが、今回はフルオーケストラの演奏とともに、2時間20分を演じきる。
「言葉の壁は不安がありますが、音楽を通じてどこまでコミュニケーションできるか楽しみ。不思議と落ち着いた気持ちです」とにっこり。秋には岩出市でがい旋公演を開き、海外で得た経験を披露するつもりだ。
写真左=5月、ブルガリアの歌劇場で舞台に立つ矢倉さん(中央)
(2016年6月11日号掲載)