高齢者、障害者に安心して旅を楽しんでもらう取り組みを和歌山市のNPOが進めている。WACわかやまは毎年、春と秋にサポートスタッフ同行の日帰りバス旅行を企画。ふれ愛たび倶楽部は、個人の要望に応じたオーダーメードの旅をプランする。「年齢、障害に関係なく、旅の喜びを感じてほしい」と両NPOとも生きがいづくりを応援している。

 託児、高齢者の助け合いなど少子高齢化社会を支えるWACわかやま。2011年に和歌山県の補助を受け、インターネットにサイト「わかやま歩歩歩」を立ち上げた。県内の宿泊所や温泉、駅、公衆トイレなど570ヵ所のバリアフリー状況を取材し発信する。「県外から問い合わせがありました。全部ではないですが、今年度中に内容を新しくします」と旅サポート担当の神徳佳子さん。

 力を入れるのが年に2回の日帰りバス旅行。自力でバスの乗り20160730_tabisien降りができるのが条件だが、車イスを4台積み、旅のサポーターが7人同乗する。旅程も体力に配慮し、長時間歩けない参加者には途中から車イスで介助する。今春は神戸市のカネテツでカマボコ作り体験をし、大阪で水陸両用バスに乗り、川べりの風景を楽しんだ。

 毎回、約40人が参加し、リピーターが多い。高野山の紅葉に「再びこんな美しい景色を見られるなんて」と感動の声が聞かれた。中村富子代表は「一人で旅はできない人の『旅をしたい』という思いを生かしたい。家族と一緒に参加される方もいますが、サポーターがいるので家族は少しは楽ができるのでは」。旅のサポーターの研修も定期的に重ね、神徳さんは「バスツアーだけでなく、おでかけのサポート体制をいかにつくれるかが今後の課題です」と語る。

 一昨年に立ち上がったふれ愛たび倶楽部は、高齢者、障害者と事前に打ち合わせし、旅程の下調べを行い、旅をオーダーメード。旅行業、旅客自動車運送業認可を得て、福祉車両を保有するのが強みで、高齢者4〜6人のグループを対象とした日帰りミニツアーを実施し、高野山・九度山のバリアフリー旅行のプランも提供する。

 立ち上げ当初には「戦争で命を落とした学友の慰霊碑に手を合わせたい」と望む高齢女性が、戦時中に学徒動員された明石市の川崎重工業明石工場へ旅をするのを支えた。途中、温泉へも立ち寄り、女性から「細やかな心配りを頂き、楽しい旅ができました」とお礼の手紙が寄せられた。

 ヘルパーは必要に応じて配置し、墓参りや孫の結婚式への出席などにも対応する。海外旅行や国内ツアーへの介助と要望は多様だが、宮井淳彦理事長は「今はミニツアーを軌道に乗せ、高齢の方の気晴らしにしてもらえれば」と話す。「細かい要望を聞き、深い思いを理解し、こたえる必要があります。現在、会員を募り、活動をPRする段階ですが、将来的にはボランティアの協力を得て、高齢者と青少年の世代間交流を図りたい」と望んでいる。  

 WACわかやま(073・414・1189)。ふれ愛たび倶楽部(0120・533・810)。

 写真=WACわかやまは春と秋にバスツアーを実施

(ニュース和歌山7月30日号掲載)