つながれジャパニーズ 日本語教育で地域と結ぶ
和歌山で働く外国人労働者の増加を受け、日本語教室を開く「つながれジャパニーズ」は、9月から日本語を教えるボランティアの養成講座を開催するほか、日本語教材作成など外国人支援を本格化させる。地域のニーズに合わせた活動が特徴で、服部圭子代表は「外国人が困った時、すぐに手を差し伸べられるネットワークを和歌山でつくりたい」と描いている。
和歌山労働局によると、県内で働く外国人は2015年が1725人で、10年から622人増加。中国人が774人と最も多く、フィリピン人、ベトナム人と続く。特に製造業や小売業など人手不足の分野で外国人雇用が増えており、同局は「宿泊・飲食サービス業や情報通信業と多彩な業種にも広がっている」と話す。
行政は様々な外国人労働者支援をしており、和歌山市手平の県国際交流センターでは、外国人相談窓口の設置や週5回の日本語クラスを行い、和歌山市も日本語クラスを週3回開催している。同センターは「市町村レベルの丁寧な対応ができておらず、全ての外国人に行き渡っていない。外国人が増える中、行政と地域で連携した支援が必要になっている」と語る。
つながれジャパニーズは昨年8月、支援が行き届いていない那賀地方で日本語を教えようと、言語文化学を専門にする近畿大学生物理工学部准教授でもある服部代表が、日本語教師らと発足させた。週5回の教室では、ベトナムやタイ、インドネシアからの労働者らに教える。「岩出、紀の川市でも外国人が増えています。和歌山市の教室に行くには電車賃も時間もかかり、困っている外国人が多かった」とメンバーの青木優子さん。
9月1日の教室には、インドネシア人12人が参加した。日本語基礎に加え、「岩出市の燃えるゴミの日は?」「和歌山弁の『ほっといて』は、捨てての意味」といった地域性を盛り込んだ授業を展開。製造業で働く20代の女性は「スーパーでの買い物の仕方やゴミの出し方を教えてくれ、生活に役立ちます」。20代の男性は「分からないことがあればすぐ教えてくれ、毎週来るのが楽しみ」と笑顔を見せていた。
回を重ねるごとに、他の外国人からの要望や、より上級レベルの個別レッスンへの希望が増えたため、同団体は指導にあたるボランティアの育成に乗り出した。きょう10日(土)に第1回養成講座を行い、12月まで指導技術のほか、多文化共生のあり方などを伝える。青木さんは「日本人、外国人関係なく、同じ地域で生活する者として寄りそう心を持ってほしい」。
現在力を入れるのが、和歌山での生活に役立つ日本語会話の教材作り。県内のバスや病院の利用方法、近所付き合いのマナーや方言を盛り込んだガイドで、3年かけて完成させる計画だ。服部代表は「互いを尊重して過ごし、外国人の居場所になる場を地域に増やしていければ」と願っている。
(ニュース和歌山2016年9月10日号掲載)