県 中3全員に3級以上実施
中学校の英語教育で実用英語技能検定、通称・英検の活用が進んでいる。県教委は昨年度から中3生全員に原則3級を受験させ始めた。近畿大学附属和歌山高校は来年度入学生の試験から、受験生が持つ級数に応じて得点を保障。中学生の英検への意欲を高め、受験勉強のあり方への影響も必至だ。従来の「読む」「書く」に加え、「聞く」「話す」の4つの技能の育成を図る国の方針に沿った取り組みで、専門家からは「入試制度と指導カリキュラムの両輪で進めていくことが望ましい」との声が聞こえる。
県教委は2011年度、和歌山の良さを世界に発信し、活躍できる人材を育てようと「国際人育成プロジェクト」を開始。小中学校では地元の民話や人物を題材にした英語教材の開発と活用、高校では英語を使った討論会を開催する。
昨年度から全中3の学習指導に英検を採用。秋田県に次ぐ全国2番目の導入で、受験料を県が負担し、毎年秋に1次試験を各校、2次試験を県内約10会場で行う。受けるのは中学卒業レベルとされる3級以上で、3級程度の英語力を持つ生徒は一昨年の31・0%から昨年度は39・9%に上昇。全国平均の37%を上回り、国が掲げる「17年度までに50%」を目指す。
英検の推進は授業も大きく変えている。話す、聞く力を高める授業を行うため、県教委は14年から毎年、教員を東京での研修に派遣。ゲームなどを取り入れ、生徒たちに英語を多く話させる授業法を身につけている。
西脇中学校(和歌山市西庄)の永田佳子教諭はその一人。教科書での学習に加え、身近な出来事を習った文法で表現することに時間を割く。「自分の言葉を英語で伝える喜びを知り、自信がなくても話そうとする姿勢を伸ばします。従来の黒板に書いて学力を高める授業と、生徒自身が考えて学力をつける授業のバランスが大切」
授業を受ける3年の南暢人さんは「実践的で英語力を試せる」、古城亜紗巴さんは「緊張した英会話に今は慣れました。英検は初めてですが、いつもの教室なので緊張せず受けられる」と喜ぶ。
近大和歌山高 来年度入試から考慮
こんな中、近大附属和歌山高は来年度入試で英検を活用。200点中、3級取得者に100点、準2級に130点、2級以上に160点を保障し、試験の点数と比べて高い方を得点とする。県内初の試みで、同様の取り組みは全国の私立高校を中心に進んでおり、大阪府立高校の入試でも来年度から導入する。
3級を持つある中学生は「受験で少しでも有利になるのであれば安心できる」と歓迎。近大和歌山高の吉田武志教頭は「英語の基礎力を評価できる。英語は人と接するための手段で、それを生かして活躍できる人材を育てたい」と描く。
和歌山英語教育研究会理事の戸川定昭さんは「英語を話す技能を試せる機会が全員に保障されるのは良いこと。英検が浸透する一方、苦手な子の負担にならないよう配慮が必要だ」と見ている。
(2016年9月24日号掲載)