1972年から2002年まで、様々な公害を学ぶ機会を提供してきた「和歌山から公害をなくす市民のつどい」が11月3日(木)、14年ぶりに教室を開く。発足から会を引っ張り、今年3月に亡くなった医師の汐見文隆さんを偲(しの)ぶ会として開催。松浦攸吉(ゆうきち)世話人は「汐見さんが残した映像資料を上映する〝最後の授業〟。新しい技術は良い面ばかり注目されますが、技術の暴走か、暮らしを豊かにしてくれるのか、判断できる知識を身につけてほしい」と願っている。
内科医の汐見さんが日赤和歌山医療センターで働いていた1970年代初め、和歌山市のある地区の肺がん発症率が高かった。工場で働く人が多く、周辺の飲食店や小売店もその恩恵を受けていたため、公害についてだれも口にすることはなかったが、汐見さんは「発言がなければ問題がないと思われてしまう。発言するためには知識が必要だ」と学習会を始めた。
2002年まで毎月1回開いた教室は、光化学スモッグや食品に含まれる発がん性物質、地元では雑賀崎の埋め立てや日高原発建設問題などを扱い、それぞれの問題に取り組む市民グループや研究者を招いた。毎回50~60人が参加し、技術の進歩と生活の便利さ、環境保全について意見を交わした。
教室は、公害問題への関心の低下と会員の高齢化で休止したが、汐見さんは亡くなる今年3月まで工場の機械や風力発電で発生する低周波音の研究を続けた。
松浦さんは汐見さんが残した文献を遺稿集『医師・汐見文隆の行跡』として編集。3日の教室で遺稿集を配布し、低周波音の健康被害について、汐見さんが語った映像を上映する。
午後2時から、同市西汀丁の勤労者総合センター。無料。申し込み不要。松浦さん(073・451・5960FAX兼)。
写真=生前、教室を引っ張った汐見さん
(ニュース和歌山2016年10月29日号掲載)