がんの中で死亡率が極めて高いすい臓がん。県立医科大学は東京の製薬会社、テラファーマと連携し、患者の免疫力を活用した「樹状細胞免疫療法」の安全性と有効性を検討する治験を来年3月にスタートさせる。
国内のすい臓がんによる死亡者数は年間3万1000人。がんの中で4番目に多く、この25年間でがん全体の死亡率は4%低下したのに対し、すい臓がんは1・5倍に増えた。手術、抗がん剤、放射線といった標準療法が効きにくく、県立医大は新しい治療薬の開発として免疫療法の研究を進めている。
今回は、免疫の司令塔の役割を担う樹状細胞を活用。患者から採取した樹状細胞を製薬会社で培養し、がんの目印となるペプチドを取り込ませて再び患者に投与する。がんの情報を持って体内に戻った樹状細胞は免疫細胞を活性化させ、効率よくがんを攻撃する。正常細胞も傷つける標準療法に比べ副作用が少ないのが特徴だ。
治験は県立医大を中心に全国19の医療機関で実施。5年間で患者185人に行い、有効性の検証と承認申請を経て、2023年以降の保険治療開始を目指す。
研究を主導する県立医大第2外科の山上裕機教授は「これまでの免疫療法に比べ、より強い免疫反応が期待できる。成功すれば他のがんにも広げられる」と話している。
(2016年12月17日号掲載)