17030401_toilet

 洋式トイレが一般的になる中、公立小中学校のトイレの洋式化が遅れている。昨春、文部科学省が行った調査によると、和歌山県は洋式の割合が全国ワースト5位で、全国平均を大きく下回る。家庭の大半が洋式のため、和式が多い学校のトイレはギャップが大きく、児童のストレスとなっており、民間の協力で改修を図る学校もある。対応は各市教委で分かれており、和洋半々となるのも少し先になりそうだ。

 和歌山県内の小中学校にあるトイレ数1万3027のうち、洋式が4057(31・1%)、和式8970(68・9%)。和歌山より洋式率が低いのは鹿児島(30・5%)、長崎(30・3%)、島根(30・0%)、山口(26・7%)のみで和歌山は下から5番目だ。全国平均43・3%も遠い。高かったのは、神奈川(58・4%)、沖縄(54・7%)、山梨(54・4%)の順だった。

 和歌山市、海南市、岩出市、紀の川市のうち、洋式率が最も高いのが岩出市で42・0%、次いで紀の川市30・8%、和歌山市26・5%、海南市19・6%。岩出市は新築、改修の際、各階に1つ程度和式を残す形で、ほか洋式化を進め、「その都度、洋式を増やし、結果的に割合が高くなった」(同市教委)と語る。

 和歌山市は随時改修を進める一方、「洋式率95%」を目標とする計画を現在策定中。他市は、「新設や配慮の必要な人が入学する場合に対応し、少しずつ率は上げている」(海南市)、「新築改築の場合は洋式をメーンにして和式を一つは入れる」(紀の川市)とし、計画的な改修はない。

 名草小(和歌山市紀三井寺)は2013年、小林製薬の洋式トイレ提供企画に応募。当選し、1ヵ所のトイレで男女各1つの和式を洋式に変更(写真)、床のタイルには臭気対策を施した厚いシートをはりめぐらせ、環境を大きく改善した。

 各トイレに1つは洋式があるため、保護者から増設の要望はないが、小便器が古く、美化を求める声は出る。名古武史教頭は「きれいになれば児童はそれを保とうとする。洋式化に限らず、美しくて使いやすく、出入りしやすいトイレが望ましいですね」。

 一方、11年新設の藤戸台小(同市栄谷)は洋式がメーンで、大便器すべてが洋式のトイレもある。和式が大半の小学校では、入学前の説明会で、児童に和式トイレの〝自主トレ〟を求めるが、古谷友宏教頭は「家のトイレが、終わると、自動で流れるタイプのため流し忘れがあり、説明会では用を足したら流すように伝えました」。

 日本トイレ研究所(東京都)によると、「小学校でうんちを我慢したことがあるか?」についての近年の調査では、「ない」54%、「ある」46%だった。「ある」とした理由のうち、「和式トイレが苦手」が35%あった。同研究所の加藤篤代表は「和式が悪いのではなく、洋式の家庭で育ったギャップによるストレスが問題」と指摘する。

 ある市教委の担当者は「これまで学校の改修といえば耐震、空調が優先されてきた。今後、洋式化は大きなポイントになる」とみている。加藤代表は「今は過渡期で、学年が上がると、人が座った便座が嫌な子も出てきます。洋式が増えるのはいいが、選択できる形が望ましい。一番大切なのは安心してトイレを使用できること。排せつや、使い方の文化の差を学ぶトイレ教育も必要」と話している。

(ニュース和歌山より。2017年3月4日更新)