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 視覚効果にこだわった写真や絵を本の形にまとめ、言葉がなくても伝わる芸術作品「アーティスツブック」。明治時代の和歌浦を描いた絵が並び、当時のアーティスツブックとも言える観光案内本『紀伊和歌浦図』にスポットを当てた講演会が2月17日、和歌山県立図書館2階で開かれた。

 日本とイタリアのアーティスツブックの魅力を感じてもらおうと、両国のアーティスト6人が出品した展覧会「本と美術の緊密な関係」の一環。和歌浦で明治・大正時代に栄えた旅館、あしべ屋妹背別荘を管理する西本直子さんと、古い絵ハガキや古写真を収集する溝端佳則さんが解説した。

 1893年(明治26年)に作られたこの図について、溝端さんは、当時はツルがたくさんいたこと、三断橋や御手洗池は今も残っていることを紹介。また、西本さんは、見た人がその場にいるような感覚になる工夫がされている特徴を紹介し、「片手サイズで持ち歩け、同じ縮尺で描かれた横長のページをめくることで、自分が歩いているように感じられる。考えてつくられた冊子」と話した。

 企画者の一人、日高川町の墨象画家、尾崎水耶(みや)さんは「写真や絵など様々なものが本という媒体になることで、一つのつながった作品になる。そしてまたその作品を集めて展覧会を開くことで、そこで出会った人と人がつながってゆけば」と期待していた。

写真=『紀伊和歌浦図』について説明する西本さん(左)と溝端さん

(ニュース和歌山より。2017年3月4日更新)