放置空き家が問題となる中、和歌山県は2月、問題のある空き家(特定空き家)を判定する基準を設けた。2015年施行の空き家対策特別措置法(特措法)に基づき、各自治体が所有者に対し適切な処置を求める際の目安。県建築住宅課は「建物の状態を数値化することで適切に評価でき、市町村が対策を進めやすくなる」とみる。
県は、建物の傾きや基礎変形、屋根欠落など17項目を判定基準に設定、状態を数値化し、A~Cの3ランクに分ける。さらに、ゴミの放置状況やアスベストの飛散可能性、近隣への影響度の高さ、緊急性を加味し、現状を把握する。
13年調査で県内には8万6000戸の空き家があり、空き家率18%は全国3位。対策は急務だが、これまでは安全、衛生面に問題があっても私有財産のため手を付けにくく、16年3月、景観法に基づき所有者に代わって撤去を実施する代執行をした例が1件あるだけ。
特措法施行により、従来は撤去や危険防止対策について、助言・指導や命令しかできなかったが、代執行が可能となった。ただし、国のガイドラインは「倒壊の危険が大きい」「衛生上問題がある」と漠然としていたため、統一の判断基準が求められていた。
和歌山市は「基準ができたことで対策に優先順位を付け、緊急性の高い物件から指導に入れる」と話す。同市は13年制定の空き家条例に基づき、問題ある建物の所有者を指導してきたほか、14年には空き家除去補助制度を設けて後押し。新年度は、土地提供を条件に、市が建物を取り除き災害時の一時避難所とするポケットパーク事業や、建物を改修し集会所として利用する地域サロン事業に取り組む。
海南市も16年に除去補助を始め、新年度はさらに件数を増やす。岩出市は昨年、空き家対策計画を策定し、紀の川市は今年、計画策定に入る。
写真=問題の放置空き家。新基準で撤去の後押しを図る
(ニュース和歌山より。2017年3月22日更新)