赤身が鮮やかな〝レアに見えるとんかつ〟(写真)を和歌山市で居酒屋、紀州蔵を営む村畑圭悟さんが考案した。霜降りの熊野ポークを使い、滅菌しながら食味を損なわない調理方法。わかやま産業振興財団の新産業育成事業に調理法が選ばれたのは珍しい。村畑さんは「日本人は生食を好む傾向がある。レアに見えることを付加価値に、地元ブランドの熊野ポークを発信したい」と力を込める。

 霜降り豚肉は2年前、和歌山県畜産試験場と近畿大学が共同開発した。三元豚の筋肉内脂肪の割合を高くし、肉汁が豊富でやわらかいのが特徴。地元食材にこだわる村畑さんがとんかつ用の肉を探す中、和歌山は豚生産量が全国最下位と知った。そんな中、熊野ポークの仕入れにメドが立ち、以前から温めていた調理法について昨秋、本格的に研究を始めた。

 力を入れたのは、安全性と食感の両立。豚肉はしっかり火を通すことで滅菌できるが、水分が少なくなり肉がかたくなる。肉汁たっぷりの赤身をのぞかせつつ、滅菌も実現するため、下処理段階での加熱や、揚げる油の温度、時間を試行錯誤。和歌山県環境衛生研究センターの測定で、調理前後で水分含有量は変わらず、菌数は減少し衛生基準値を大幅に下回った。

 さらに、和歌山信愛女子短大の協力で味覚、食感、栄養価を調査。みずみずしさを保てたことで、学生からは「やわらかくジューシー」「赤身がおいしそうなので、出すときは断面が見えるように」といった回答を得た。また、調理前後で栄養価はほぼ変わらないことも分かった。村畑さんは「新しい調理法で熊野ポークファンを増やし、生産量拡大につなげたい」と意気込んでいる。

 とんかつは5月9日(火)から和歌山市十二番丁の紀州蔵で提供する。午前11時半~午後1時半。同店(073・496・4427)。

(ニュース和歌山より。2017年4月15日更新)