機械関連の仕事に携わり66年。紀の川市貴志川町岸宮の谷池繁さん(81)が、高速回転に耐えられる工業用ブラシの自動製造機と、このブラシの毛をだ円形に自動でカットする機械を開発した。これらで作ったブラシを電動ドリルの先に付けて使えば、機械部品の穴や筒状のものの内部などを効率よく磨き上げることができる(写真下)。「どちらの機械も世界初の技術。世の中の人ができないということに挑戦したい性分なんです。今の目標は生涯現役で働くことですね」。80歳を超え、ますます元気だ。
和歌山市生まれの谷池さんは城東中学校を卒業後、青陵高校(現・きのくに青雲高校)で夜間に学び、昼間は三菱電機で働いた。その後、複数の機械関連会社に勤務。このうち、37年間は工業用ブラシのメーカー2社に勤めた。自宅で自動機械設計製作の「谷池企画」を立ち上げたのが2011年。75歳だった。
開発を進め、今年1月に完成したのが、4芯自動植毛機と自動散髪機だ。まず4芯自動植毛機は、2本の針金で毛をはさみ、ねじって作る2芯のブラシより丈夫な4本の針金を使ったブラシを自動で作れる。谷池さんは「他社製品は1分間に1500回転以下で使うよう説明書に書かれていますが、私の4芯ブラシは3200回転でもどうもない。2倍以上の仕事をするということです」と胸を張る。
一方の自動散髪機。砥粒(研磨に使う硬い粒)が含まれる毛をだ円形に切るのは高い技術が必要で、これまでは毛が真っ直ぐなものばかりだったが、これを独自の技術で可能にした。
これらの機械を使って製造したブラシは、粗加工用、中仕上げ用、上仕上げ用の3種類ある。複数の鉄鋼関連企業で試してもらったところ、評判は上々。機械加工やステンレス加工を手掛ける岩橋商店(和歌山市美園町)の岩橋正勝代表は「様々な部品の穴に残ったわずかな突起物は今まで、やすりで削るしかありませんでしたが、やすりは突起物の周辺に傷を付けてしまう。このブラシだと素早く、傷も付かず作業ができる」と評価する。
自慢のブラシを未来の技術者に使ってもらおうと、全国の工業高等専門学校に贈呈。6月には東京で開かれる金属などの加工技術を一堂に集めた専門展「機械要素技術展」に出展する。「来年にはより硬いものも磨けるよう、砥粒にダイヤモンドを使ったブラシを作りたい」と谷池さん。「他社製品の価格を参考にすれば、私のブラシは3000~4000円になりますが、1000円で売ると決めました。15歳から働いて66年間、この世界で勤めさせてもらった恩返しです」
来月で82歳、向上心は衰えを知らない。
商品の詳細は谷池企画ホームページ。
写真=発明した機械で工業用ブラシを作る谷池さん
(ニュース和歌山より。2017年4月15日更新)