和歌の浦アートキューブで毎月開かれる日本の古典文学に親しむ勉強会「和歌浦万葉塾」が、漢詩、漢文、和歌をまとめた『和漢朗詠集』を日本語と中国語で読み解く試みを3月に始めた。企画する和歌山大学教養の森センターの天野雅郎センター長と和大職員で中国出身の楊春春(ようしゅんしゅん)さんは「日本人と中国人で視点や解釈が少し異なる点を楽しみながら、両国の相互理解につなげたい」と話している。

 2005年に和大へ留学し、平安時代の文化と中国の関係について研究した楊さん。在学中、天野センター長や地域の人たちの協力で、日本文化を体験し、中国語教室を開いた。「和歌山の人たちはあたたかい。留学生活の不安が和らぎました」。卒業後は和大に就職し、留学生を支援している。

 『和漢朗詠集』は紀貫之や白居易といった両国の詩人や歌人の作品で構成され、成立した平安時代には最も多く写本が作られて親しまれた。09年から万葉塾を開いてきた天野センター長が、同作を中国語で読もうと考え、楊さんに声をかけた。

 3、4月はそれぞれ約20人が参加した。春の花をテーマにした作品を楊さんが中国語で読み上げ、「日本で春の花といえば桜をさしますが、中国では桃です」と解説。参加者からは「原文の中国語で聞くと響きが良い」「リズムが良い」と好評だった。楊さんは「文化の違いを表面的に学ぶのではなく、互いの感性を知る機会にしたい。今一度、深く知り合うきっかけになれば」と願っている。

 500円、中学生以下無料。次回は5月13日(土)午後2時、アートキューブで。天野センター長(mamano@center.wakayama-u.ac.jp)。

写真=古典文学に親しむ楊さん(左)と天野センター長

(ニュース和歌山より。2017年4月15日更新)