江戸時代から紀の川北岸の平野部を潤してきた小田井用水を「世界かんがい施設遺産」に登録しようと、管理する小田井土地改良区が申請し、10月にメキシコで開かれる国際かんがい排水委員会で審査される。登録は確実視されており、認められれば和歌山県内初となる。


 小田井用水は橋本市高野口町小田から岩出市の根来川まで30㌔。和泉山脈から紀の川へ流れる支流の上を通る水路橋や、地下水路「伏越」など4施設が2006年に国の登録有形文化財になっており、今も600㌶の農地に水を届けている。

 和泉山脈の扇状地や河岸段丘が広がる紀の川北岸地域は、紀の川の支流やため池で農業を営んでいた。しかし、水不足になりがちで、たびたび争いが起きていた。5代紀州藩主、徳川吉宗は1707年、橋本市の土木技師、大畑才蔵に指示し、開削が始まった。

 蛇行する和泉山脈の等高線に合わせて掘り進める難工事を、大畑は緻密な計画を立てて25工区に分け、同時着工することでわずか4年で完成させ、工費節約につなげた。また、独自の測量器具「水盛台」を考案し、水路の傾斜を非常に緩やかにして、より広い地域への水の供給を実現させた。

 世界かんがい施設遺産は2014年に国際委員会が創設。地域住民への貢献度や技術の先進性、現代に生かされている点などを評価し、これまで世界8ヵ国47施設が登録されている。国内では大阪府の狭山池や熊本県の通潤用水などがあり、今年度は11件の申請から小田井用水を含む4件が国内委員会で選ばれ、国際委員会へ申請された。

 同改良区の米澤一好事務局長は「開削によって1000㌶もの新たな農地が開かれ、人々の暮らしや藩の財政を支えた。紀の川筋の農耕の礎を築いた大畑の功績と水路の価値を見直す機会にしたい」と思いを込めた。

写真=小田井用水の説明をする米澤事務局長

(ニュース和歌山/2017年9月9日更新)