和歌山市の中心部を流れる真田堀川と、築地通りの間に店が並ぶ元寺町のアーケード街。ここ1、2年、若手経営者が次々と出店し、「元寺町ストリート」と銘打って活性化に取り組んでいる。東南アジアやアフリカ、沖縄など様々な地域の料理を提供する店が並び、旅行者と地元の人を結ぶ仕掛けのあるゲストハウスも誕生した。誘致を進める西中宏さん(42)は「個性ある店が集まりつつある。店先にイスを置いて皆がくつろげる空間にしたい」と描いている。

昭和の香り漂う街


 江戸時代に紀の川と和歌川を結ぶために造られたとされる真田堀川。大丸や長崎屋があったころは商店街を歩く人も多かったが、近年は人通りが減り、空き店舗が目立っていた。同商店街で58年暮らし、10年前まで飲食店を営んでいた山本真也さん(80)は「戦災復興事業でけやき大通りを拡張する際、代替地として市が長屋を建て、店を入れたのが始まり。八百屋、洋裁店にかんぶつ屋もあった。ここ20年ほどで客が減り、店主の高齢化が進み、次々と閉店していきましたね」と振り返る。

 こんな中、若手店主らが「元寺町ストリート」と題し盛り上げ始めた。活動を引っ張る西中さんは2011年にアジア料理店「ウトト」をオープン。飲食業を始めようと考える友人らに声をかけ、これまでに串カツ、天ぷらなど飲食店を中心に7店を誘致した。

 今年3月にたこ焼き鉄板バー「エン」を開いた北野あいさん(34)は「同じように店を構えた仲間や近所の人、お客さんのつながりが強く、温かさを感じます」。6月にスープカリーキッチン「チル」を構えた北野卓さん(34)は「昭和の香りが漂い、街の歴史を感じられるのが良い。同じ通りで多彩な食文化を楽しめるのも魅力」と語る。

 出店が相次ぐ中、真田堀川に注目したのはゲストハウス「サナ・イン・タウン」。昨年、同市が開いたリノベーションスクールの受講生、板東高功(たかよし)さん(40)が仲間と会社「真田堀家守舎」を立ち上げて開設した。市の外国人宿泊客が2011年の6000人から15年には約10万人に増えたのを踏まえ、商店街に旅行者を招き入れようと考えた。


 今年4月からペンキ塗りや床板の張り替えを進め、9月に完成。川の上に突き出た部屋の床の一部を強化ガラスにし、床から川面が見えるようにした。また、宿泊者に商店街で使える食事券を渡し、飲食店を訪れる地元の人と旅行者の交流を促す。土産用に紀州漆器の箸を販売し、近隣店で使うと割り引きが受けられるサービスも計画する。「川は潮の干満で海と川の魚を両方見ることができます。交流を広げ、地域に開かれた宿にします」と板東さん。

 ゲストハウスの出店に西中さんは「外国人スタッフがいる店もあり、交流したい人や外国人旅行者が居着くようになる。第二阪和国道の開通で通りを走る車が増え、ますます面白い商店街になる」と期待。出店した仲間と共に各店の廃油をドラム缶に集めて換金し、通り沿いに花を植え、看板の設置費用に充てる取り組みも始めており、「元寺町ストリートへ行けば、だれかがいる、何か面白いことがある、と思ってもらえる場所にする」と意気込んでいる。

 こうした動きに、山本さんは「通りを歩く若者が増えました。商店街をにぎやかにする活動を今後も見守っていきます」と目を細めている。

写真上=「このドラム缶に廃油を集めています」と西中さん
同下=床に窓を設けた板東さん

(ニュース和歌山/2017年10月21日更新)