人口減、少子高齢化と地方を取り巻く環境が依然として厳しい中、県は来年度の新政策と予算編成の方針として長期総合計画に掲げる「めざす将来像」への道筋をより確かなものにすると表明しています。和歌山の未来を担う「ひと」をいかに育て、その暮らしのもととなる「地域」をいかに創っていくか。仁坂吉伸県知事に、髙垣善信ニュース和歌山主筆がインタビューしました。

みんなが活躍できる社会へ
「元気な和歌山」に向け第一歩

髙垣主筆(以下、髙垣) 来年の新政策の方針では、未来を担う「ひとを育む」取り組みに重点を置くとされています。その中で新たに「多子世帯の経済的負担の軽減を図る」とありますが、この目的と、またどんな試みがなされるのか教えてください。


仁坂県知事(以下、仁坂) 県では、多子世帯への経済的支援として、市町村とともに第3子以降を対象に0歳から就学前までの保育料等の無料化を進めてきました。それをさらに拡げ、所得制限はありますが、第2子まで対象にしたいと考えています。しかし、保育所に預けないと恩恵が受けられないというご指摘もありますので、在宅で0歳児の育児を行う世帯に対しても経済的支援を検討しています。

 

生きがい感じ社会参加を

髙垣 今年は80歳現役社会の実現に向け、社会参加を希望する高齢者の登録システム「わかやま元気シニア生きがいバンク」や、女性が継続して働きやすい職場環境をつくるため「女性活躍企業同盟」の立ち上げがありました。人口減時代、県民みんなが活躍できる社会づくりに向けた試みに見えます。展望はいかがですか。
仁坂 「元気な和歌山」を実現するためには、県民の皆様に、いつまでも生きがいをもって活躍してもらうことが重要です。今年度スタートさせた「わかやま元気シニア生きがいバンク」「女性活躍企業同盟」はまさにその第一弾です。多くの県民や企業、団体に参加いただいておりますが、残念ながら広く県内に浸透しているとは言えません。今後、さらに多くの方に参加していただけるよう知恵を絞って様々な工夫を凝らしていきます。

写真=女性が継続して働き、活躍できる職場環境の整備を目指し発足した「女性活躍企業同盟」

 

地元就職支援 私大と協定

髙垣 Uターン就職や再就職を支援する仕組みをつくり、また多数の私立大学と就職支援協定を結ぶなど和歌山で働く人を増やすのにも熱心です。手応え、今後の見通しはいかがでしょうか。
仁坂 県外の大学に進学した学生に和歌山の企業をもっとよく知ってもらい、地元就職を増やそうと、Uターン就職支援に熱心な大学と就職支援協定を結んでいます。また、中途採用者に対しても、新卒者の就活サイクルのような「和歌山独自の就活サイクル」を創設し、女性や高齢者、都会からのUターン希望者などが再就職しやすい和歌山県をめざしています。

写真=京都産業大学と就職支援協定を交わす

 

データ利活用を企業にも推進
総務省統計局移転

髙垣 いよいよ来春に総務省統計局の一部が和歌山に移転し、先進的なデータ利活用拠点である統計データ利活用センター(仮称)が開所します。県はこの移転をどういった形で和歌山の活力向上につなげていくのでしょうか。
仁坂 来春の統計局移転に合わせ、統計局と連携して統計やデータの利活用を推進する「和歌山県データ利活用推進センター」を設置します。データを新商品開発や経営に積極的に活用することで、企業の成長が見込まれます。また、関西圏をはじめ幅広い地域から多くの研究者が集まれば、データサイエンス人材の育成や交流人口の増加にもつながると期待しています。

写真=2018年春、総務省統計局が移転・入居する南海和歌山市駅ビルオフィス棟

 

道路整備の充実で経済効果に弾み
県外企業の進出増加

髙垣 京奈和の整備で、京都、奈良だけでなく東海地方へのアクセスも向上しました。京奈和沿線の橋本市では企業誘致が好調と聞きます。第二阪和も含め、整った道路網が和歌山に及ぼす経済効果の現状と今後の可能性はいかがでしょうか。


仁坂 京奈和自動車道・近畿自動車道紀勢線などの道路整備が近年大幅に進み、県外企業の進出が増えています。なかでも、本年度、京奈和沿線に進出が決定した5社の投資額は約100億円、正社員は約100名の雇用を見込んでいます。この勢いにさらに弾みをつけるため、橋本市では新たな工業団地の開発を始めました。今後、道路網がさらに充実することで、企業立地はもちろん、産業振興、観光などにおける和歌山のポテンシャルは飛躍的に高まると考えています。

写真上=3月に県内全線が開通した京奈和自動車道、同下=第二阪和国道開通式

 

台風被災地域復旧目指す

髙垣 10月の台風第21号でかなりの数の道路が全面通行止めになり、崖崩れで被害者が出ました。県では災害、防災対策には力を入れていますが、今回の災害を踏まえ、さらに取り組むべき課題はどういった点でしょうか。
仁坂 はじめに、台風第21号により、お亡くなりになられた方の御冥福を心からお祈り申しあげますとともに、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。今回の台風では、浸水被害や土砂災害、道路、河川などで大きな被害が発生しましたが、迅速に応急復旧を完了させ、来年度中に本格復旧を目指しています。また、被災された中小企業への支援制度を速やかに創設しました。引き続き、被災地域の迅速な復旧と被災された方々への支援に全力を挙げます。

 

和歌山の魅力発信するサイクリング環境整備
県内800㎞周遊ルートで集客図る

髙垣 高野・熊野や豊かな食、「水の国」、ジオパーク構想と様々な角度から県の魅力の発信がされています。中でも全県のサイクルロード整備が800㎞に及び、「サイクリング王国わかやま」を掲げられました。今後の取り組みと、観光施策において次に目指す点を教えてください。
仁坂 豊かな自然の中を、楽しみながら周遊していただけるよう、県内約800㎞に及ぶ海・山・川の周遊ルートの整備やバイクラックの設置、サイクリストにやさしい宿の拡大など、快適なサイクリング環境の提供を進めます。また、メディアを効果的に活用し、世界遺産を巡るルートや絶景の海岸ルートなど「和歌山ならでは」のサイクリングの魅力を国内外に発信し、もっともっと和歌山に来てもらえるようにします。

写真=和歌山の自然や文化、食、人とのふれあいなどを楽しめるサイクリングロードを整備

 

髙垣 最後に来年に向けた抱負をお聞かせください。
仁坂 今年策定した10年間の道しるべとなる長期総合計画を軸に、県民みんなが活躍できる「元気な和歌山」の実現に向けた新たな施策が走り出しました。社会構造を変革させるための大きな仕掛けを着実に軌道に乗せ、進むべき将来像への道筋をより確かなものにすべく、県政のさらなる発展にたゆまず頑張ります。
髙垣 ありがとうございました。

(ニュース和歌山/2017年12月23日更新)