和歌山市で広がる体験農園〜鳴神に続き新中島、梅原も
農家が畑を貸し、指導しながら契約者に育ててもらう農業体験農園。東京都練馬区で20年前に始まった取り組みで、和歌山市ではJAわかやまと和歌山大学観光学部が提案し、2016年、鳴神にNPO法人全国農業体験農園協会の加盟第1号が開園した。今年4月には、同市新中島の太田ファーム、梅原の梅原ファームの開園が控えており、農を通じたコミュニティづくりが広まりつつある。
農業体験農園は、土地だけを貸す市民農園と違い、農家が機械や道具、苗などすべてをそろえる。種まきから収穫までの年間計画を立てたり、栽培のコツを教えたりと直接指導し、初心者には特に人気だ。全国農業体験農園協会には現在、139園が加盟する。
利用者は年間使用料を支払うが、「市場価格に置き換えると、利用料に対し、2倍ほどの量の野菜が収穫できる。また、農家も土地を貸すことで、天候に影響されない安定した収益を得られるのがメリット」と語るのは、JAわかやま営農生活部の池田信義さん。
JAと和大観光学部は2015年から3年間、「新たな市民農園の展開による都市農業再生」をテーマに共同研究に取り組む。この中で、体験農園の視察や講演会の企画、農家、利用者への広報を行っており、農山村再生ゼミが直売所で500人に行ったアンケートでは、25%が「利用してみたい」と回答した。
和歌山県内では16年4月、第1号の鳴神ファームが宇都宮病院の敷地内に16区画で開園した。海南市の農家が有機栽培を教え、2年目は利用者のほとんどがリピーター。日々の水やりは各自で行い、定期的な勉強会や収穫祭と交流の機会も多い。
子どもと参加する和歌山市の阿部つぐ美さんは「利用者が同時に同じ品目を育てるので頑張ろうと励みになる。収穫直前のトウモロコシが台風被害に遭って悔しい思いをし、農家さんの大変さが身に染みました」と話す。
今春、同市新中島に開園する太田ファームは1区画20平方㍍で、まず12区画で始め、3年かけて3倍の区画数にする計画だ。園主の太田政文さんは自ら鳴神ファームを利用し、教え方などのノウハウを学んだ。「土を通じて地域の人とつながれる場所にしたいですね。収穫だけでなく、作業場を設けて味噌づくりもできれば」と意気込む。
同じく梅原で開園する貴志正幸さんは「これまで米栽培を中心にやってきて、貴志南小学校の児童らの体験を受け入れてきました。野菜づくりの楽しさや値打ちを感じてもらいたい」。両園とも無農薬栽培に取り組む。
このほかの地域でも開園を検討する農家が出てきている。同学部の藤田武弘学部長は「リピーターが初心者に教える、近所におすそ分けするなど、栽培、収穫を通じた交流が生まれている。まずは体験農園の認知度をもっと広めることが肝要」と話している。
太田ファーム、梅原ファームの4月からの利用者を募集中。いずれも年間4万3200円。2月10日(土)午前10時、和歌山市栗栖のJAわかやま中央営農センターで説明会を行う。申し込み不要。JAわかやま(073・473・9402)。
写真=リピーターが多い鳴神ファーム
(ニュース和歌山/2018年1月27日更新)