耕作放棄地対策に期待

 コアラの好物、ユーカリを栽培する農家が海南市と紀美野町で増えている。コアラのエサ用ではなく、観賞用として近年、需要が高まっている。農家の高齢化が叫ばれる中、枝葉の軽いユーカリは高齢の農家にとっても負担が少なく育てられるなどのメリットがある。JAながみね海南営農生活センターの宮脇敏彰さんは「耕作放棄地を減らし、少しでも農家の所得につながれば。品質を高く保てるように努めたい」と意気込む。

 宮脇さんによると、国内では静岡や四国で盛んにユーカリ栽培が行われ、ドライフラワーやクリスマスリースなどの材料として人気。JAながみねが運営するとれたて広場(同市重根西)に並ぶこともあり、仏壇にびしゃこの代わりに供える人もいる。

 JAながみね管内では2009年にユーカリ栽培に向けた取り組みが始まった。枝葉が軽く、高齢農家にも収穫や出荷作業がしやすいことから着目。宮脇さんは「例えば稲作は耕うん機やコンバインなどがいりますが、ユーカリはこうした機械を必要としない。消毒も年数回ですむ。これから農業を目指す人にも勧めやすい」と説明する。

 売上額は、5軒の農家が初めて出荷した11年度の約90万円から、16年度は約380万円に。今年度は1月末時点で約400万円と、出荷できる3月までを残しすでに前年度を上回っている。

 現在、栽培に取り組んでいるのは、60~75歳の農家18軒。このうちの一人、山田隆英さんは「収穫・出荷のタイミングを自分でコントロールできるのが利点」と語る。野菜や果物は育てば収穫しなければならないが、ユーカリは収穫可能な時期が長く、みかん、かきなど他の農作物の出荷に忙しい時期は放っておいても良い。

 一方、頭を悩ませることもある。宮脇さんは「同じ木でも上の方の枝になると、あるいは同じ枝でも先の方になると葉の形が突然変わってしまうことが少なくない」。気候が合わないのか、人の身長ぐらいまで成長していきなり枯れてしまったこともあった。

 取り組みが始まって10年目。耕作放棄地の増加が今後も予想される中、ユーカリ栽培が救世主になるか──。

写真=葉と葉の間隔が狭いユーカリが人気だそう

(ニュース和歌山/2018年2月24日更新)