使われなくなった家具を回収し、修理して再利用する事業を4月、岩出市が本格的にスタートさせる。同市根来の岩出クリーンセンターに工房を設け、1月から試験的に実施。家具のリサイクルに取り組む県内自治体は珍しい。同市生活環境課は「家庭の一般ゴミはリサイクルの浸透などで減量が進んでいますが、粗大ゴミは増加傾向。中にはきれいな家具もあり、必要とする人との架け橋になりたい」と話している。

粗大ゴミから美品回収し修理 市民へ貸し出しや販売を計画

 食器棚や鏡台、革製のソファ、桐たんす…。岩出クリーンセンターの一角にあるリサイクル工房には、様々な家具が並ぶ。粗大ゴミとして持ち込まれた中から、状態の良い物を選び、持ち主の承諾を得て工房へ持ち込んだものだ。修理は市シルバー人材センターの職員2人が担当。その一人、上野博行さん(72)は「現役時代は引っ越しなどの運輸業だったので運ぶのは慣れています。少し手を加えれば使え、もったいない」と力を込める。

 長期総合計画で循環型社会実現を掲げる同市。2012年からゴミ袋に処理費用を上乗せしたところ、減量に取り組む市民が増え、年間排出量が1万1000㌧から9500㌧になった。一方、粗大ゴミは、03年の2200㌧から増加を続け、近年は3000㌧前後で推移している。

 粗大ゴミ、とりわけ家具を処分する機会が増えるのが引っ越しだ。人口増加が続く同市は転出入者が多く、1000人当たりの転出者が32・2人と、県平均の28・5人を上回り、その分、粗大ゴミも多くなる。

 こうした中、市は粗大ゴミ削減に向け、14年に自転車のリサイクル事業を開始。ゴミとして出された自転車を修理し、乗れる状態にした上で市が主催するイベントで販売する。「昨年は2回のイベントで75台売れました。朝から行列ができるほど好評です」と同課。

 今回、リサイクル事業を家具に拡大。今年1月に回収を始め、これまでに約40点、部品を交換し、傷を消してニスを塗るなど修繕した。工房で働く野村光夫さん(65)は「1日2つぐらい直します。必要とする人に気持ち良く使ってもらえるとうれしい」と笑顔を見せる。

 修理した家具は、天災などで被害があった世帯への貸し出しを検討している。すでに3月から試験的に食卓やレンジ台などを無償貸与しており、同課は「不意に家財道具を失った人にとって、高価な家具を買う負担は大きい。市民の〝困った〟に、直した家具を生かしたい」と話す。

 また、市が販売イベントを開き、売上金を運営費にあてる計画。同課は「どの程度まで修理できるか探りつつ、幅広い活用を考えます。取り組みを進め、ゴミ排出量の削減につなげる」と描く。

 こうした事業に、わかやま環境ネットワークは「処理に費用をかけていたゴミが実はお金や社会資源になるという気付きがある。しかも修理という一歩踏み込んだ形で、全県に広がれば、リサイクルの意識が一層広がるはず」と期待する。

 対象は岩出市民のみ。市生活環境課(0736・62・2141)。

写真=家具の再生に取り組む工房スタッフ

(ニュース和歌山/2018年3月31日更新)